『H&K社はルクセンブルク企業になるかもしれない』臨時総会でCDE社と8時間に渡る攻防

ミリタリーブログサポートチーム

2019年12月23日 10:51


Photo from Heckler & Koch (H&K)
19日、「権力闘争」に揺れるドイツ銃器メーカー「H&K」社の臨時総会がおこなわれた。
大株主アンドレアス・ヘーシェン(Andreas Heeschen)氏と、フランス人投資家『ニコラス・ワレフスキー(Nicolas Walewski)』氏という、渦中の主役両名が欠席する中でおこなわれたこの総会について、日刊紙「ヴェルト」は、「フランスの金融投資家が総会で大株主に正面攻撃を開始した」とし、また週刊誌「シュピーゲル」はオンライン版の中で、『H&K社はルクセンブルク企業になるかもしれない』とセンセーショナルなリード文を打っている。

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日刊紙「フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング」は、今回の臨時総会で脚光を浴びたキープレイヤーの『 CDE社(Compagnie de Developpement de l’Eua S.A.) 』を紹介している。このCDEなる企業は、1998年に創業したルクセンブルクの金融持株会社。2015年以降、HK社の株式5.1%を保有しており、自らを「長期投資家だ」と自負している。

そしてシュピーゲルによると、「(大方の予想通り)ワレフスキー氏がCDE社の背後に存在している」と報じている。ワレフスキー氏は、カリブ海のバルバドス島を本拠地とする弁護士でもある。

また一方で、ワレフスキー氏の故郷フランスでは、日刊金融紙「レ・ゼコー」が今回の一件について報じている。それによるとワレフスキー氏は投資ファンド、アルケン・アセット・マネージメントの創業者であり、その家系図はナポレオン・ボナパルトにまで遡るとして紹介している。

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ヴェルトによると総会は、ヘーシェン体制下のローン、金融関係、キャッシュフローなどで攻防がおこなわれたようだ。依然としてヘーシェン氏が実権を握っているものの、「ワレフスキー氏も攻撃の手を休めることは無いだろう」としており、両者の対立関係が浮き彫りになったことを紹介している。そしてこうした状況を受けて、同紙は「この権力闘争はまだ続く」と締め括っている。

また地方紙「バーデン・ツァイトゥング」によると、「依然として発言力を持つヘーシェン氏は、自らが推挙した「連邦軍総監」の経験を持つハラルド・クヤート(Harald Kujat)氏の留任を支持する中で、CDE社が、クヤート氏の解任請求をおこなったが、9.5%の賛成が集まったにとどまり棄却された」「一方のヘーシェン氏は監査委員会に再任された」「CDEは現在5.1%の株式保有にとどまるものの、近くその保有比率を増強させる可能性がある」と報じている

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なおCDE社側の主張としては、「クヤート氏は経済的な経験を持ち合わせておらず、考え方も旧態依然としている」「延べ8時間に渡る攻防の中で、とりわけ2006年に9.25%もの高金利が掛けられる中で約1億ユーロもの融資を受けて他事業に展開したものの、うまく立ち行かなくなった」とし、事業の多角化を図ろうとしたHK社の経緯とその財務上の問題点を指摘している。
また、監査委員会の選出メンバーについては、約款の中で「通常(必須要件ではないが)70歳以上であってはならない」と規定されている観点から、77歳のクヤート氏の留任が槍玉に挙がったようだ。

H&K社の製品は、国防に密接するデリケートな技術であるため、「ベルリン(ドイツ政府)には、HK社の所有権の変更があった場合、一種の拒否権がある」とし、本取引が成立するかどうかは、最終的なところではドイツ連邦政府の判断を仰ぐことになると示されている。

Source: Bei Heckler & Koch eskaliert der Machtkampf der Phantome, Luxemburger Holding will Heckler & Koch übernehmen, Rätsel um Heckler & Koch gelüftet, Heckler & Koch-Interessent wagt sich aus der Deckung, Wirbel bei Heckler & Koch: Großaktionär kritisiert Mehrheitseigner, Le financier Nicolas Walewski souhaite racheter Heckler & Koch, Die Finanzholding CDE wollte den Ex-General Harald Kujat aus dem Amt des Aufsichtsratsvorsitzenden drängen. Doch die Initiative hatte keinen Erfolg.
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