平成21年度 富士総合火力演習(予行演習) 装備品展示編

ミリタリーブログサポートチーム

2009年08月30日 23:58


午後からは演習中に使用されていた装備品の展示が行われました。
日本の防衛で活躍する装備品を間近で見られるとあり、多くの観客が詰め掛ける中、案内役の隊員らとの貴重なコミュニケーションの場となりました。


対空火力の87式自走高射機関砲。74式戦車の車体にレーダーと2本の35mm機関砲を搭載。強力な火力を連射で集中する事で、敵の航空機を撃墜させます。


写真向かって左は96式多目的誘導弾システム。敵の上陸用舟艇、戦車などを遠距離から撃破するために使用されます。
右の写真は96式装輪装甲車。部内で「WAPC」の愛称で知られるこの96式装輪装甲車は兵員8名の輸送が可能。


左は89式装甲戦闘車。自衛隊内ではFV(Fighting Vehicle)の愛称で呼ばれるこの89式装甲戦闘車は、日本版のブラッドレー。
右は陸上自衛隊における主力戦車の90式戦車。90式の登場まで主力を務めていた74式戦車の主砲が105mm戦車砲に対し、90式戦車では米軍主力戦車のM1A1, M1A2エイブラムスにも採用されている世界的に定評高い、ドイツRheinmetall社の120mm滑腔砲を主砲として備えています。
なお、主砲においてライフリングがあるものを「戦車砲」と呼ぶのに対し、ライフリングが無いものを「滑腔砲」と呼びます。


左の写真は88式地対艦誘導システム。洋上において敵艦船を遠距離から撃破するために使用します。
また、右の写真は先日ご紹介致しました後段演習の模様で詳細が掲載されている92式地雷原処理車。乗員は2名となっています。


装備品展示では、演習中の上空でその勇姿を披露した様々なヘリコプターも登場。



全長30.2m、乗員3人+55人の陸上自衛隊が誇る空の巨人、CH-47(JA) チヌーク。JとJAの外観上における大きな違いとして挙げられるのが、スポンソン(sponson:胴体側面下部において横に広がった張り出し部分)が大きく盛り上がり、燃料タンクは窓枠付近へ干渉している点といえるでしょう。また、機体先端の”鼻”の形状の違いなどを見比べてみるのも面白いかもしれません。

機体先端にある赤色のリボンが垂れ下がった2本の棒状装置は、機体が上空を移動する際に発生する気圧を感知する為の対気速度計装置で、「ピトー管」と呼ばれます。
このピトー管には、機体を展示中にゴミなどが浸入しないよう、カバーを掛けており、運用時にカバーの外し忘れを防止する為、意図的に赤色の目立つリボンを取り付けています。


原形より通称ブラックホークの名で知られる多用途ヘリコプターのUH-60JA。
赤いラインに見えるのはマーキング用の赤色リボンの取り付けによるもの。このラインの上部先端には緊急時に回路を遮断する為にピンが取り付けられています。
また、UH-60 JAではブレード先端の形状が極めてカギ爪状になっている事が特徴的です。実はヘリコプターのブレード形状は、機体個々の種類によってそれぞれ異なった特色が反映されています。そういった視点でヘリとブレードを見比べると、それぞれのヘリに備わった役割が何であるかを想像でき、大変興味深い観覧となることでしょう。

なお、UH-60 JAのカギ爪状となったブレード先端は、空力学に基づき、「後退角」が付けられた事による形状で、これは飛翔時における機体の安定を増す事を狙ったものとなります。この「後退角」の角度は後述に登場するAH-64D アパッチにも同様に反映されていますが、機体サイズの違いによってその角度が異なります。



数あるヘリコプターの中でも最も洗練された機体としてファンの多いAH-64D アパッチ。この日も多くのファンから熱い視線と沢山のシャッターを浴びていました。
今回の演習で登場したこちらの写真のアパッチは、LFCRS(Longbow Fire Control Radar System:ロングボウレーダー火器管制システム)が搭載されているアパッチ・ロングボウとなり、陸上自衛隊でも配備数が少ない希少なモデル。
これは納入ペースの遅さとコストの高さが主な要因と言われ、とりわけローター上部にあるロングボーレーダーはあまりの高額の為に、全機分を揃えれなかった背景があると言われています。
また、”鼻先”にある突出したセンサーは照準と暗視の装置を兼ねており、ここで感知された信号がパイロットの視界にリアルタイムで映し出される仕組みとなっています。
アパッチの機体前方下部をご覧頂くと、毎分650発の連射を可能とする30mm機関砲「M203E1」が固定兵装されています。


3銃身20mm機関砲で武装した攻撃ヘリコプター AH-1S コブラ。この他に、対戦車ミサイル、ロケット弾を装備し、その強力な火力と優れた空中機動力を発揮して主に敵戦車の撃破を行います。演習用に機首下面のターレットにはカバーが取り付けられており、射撃後に薬きょうが散乱するのを防いでいます。

AH-1S コブラにおける外見上での最大の特徴はやはり正面からのこのショット。搭乗する2名の搭乗員をタンデムに配置する事で大きく機体の幅を削減しています。従来型のUH-1と見比べても正面からの視認面積は70%程度削減されていると言われています。

スタブ・ウイングに用意された4ヶ所のパイロンには、外側パイロンにTOWランチャーを、内側パイロンにロケットランチャーを兵装しています。


観測ヘリコプター OH-1。その役割と軽快な動きから「ニンジャ」の愛称で知られるこのOH-1は純国産によるヘリコプター。先程のAH-1S同様にタンデム型(縦列)座席を採用している為に機体本体の幅を1mと、極限までカットした事により、レーダー反射面積が小さく、目視による発見率も低くなっています。
ヒンジレス(無関節)型ローターシステムが採用されたグラスファイバー複合素材のメインローターでは、ブレード部分の長さが先述までに登場の他のヘリコプターと比較しても大変短くなっており、操縦応答性を追求した偵察機ならではの構造といえるでしょう。


以上で平成21年度 富士総合火力演習の写真レポートを終了とします。
引き続き映像の準備が整いましたら改めてこちらのNewsコーナーにてご紹介をしたいと思います。お楽しみにお待ち下さい。

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