自衛隊・警察向け訓練アイテム。純国産「タクティカル・ラバーガン(TRG)」を開発するキャロット

国内軍事関連レポート
最近、陸上自衛隊の報道映像で89式小銃のダミーガンをよく目にする。「あれは何?メーカーはどこ?」と気になっているミリタリーファンもいるだろう。
あれは「TRG(タクティカル・ラバーガン)」と言い、水路潜入訓練や格闘訓練など様々な訓練シーンで活躍しているアイテムである。開発したのは東京都にある有限会社キャロット(Carrot)。TRGは純国産品であり、同社の代表である神崎大(かんざきまさる)氏にインタビューを行った。

キャロット タクティカル・ラバー・ガン公式サイト
http://www.carrot-tokyo.com/

インタビューアーは、水陸両用訓練でダミーガンの重要性を痛感した元フランス外人部隊の野田力氏。フランス外人部隊にいた頃、「水路潜入訓練では古く廃棄扱いとなった実銃FAMASをダミー代わりとしていた」とのことで、陸上自衛隊では国産のダミーガンを使っている事を知り、TRGに興味を持ったとのこと。

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    Q. そもそも、なぜTRGを作ろうと思ったのですか?

    A. 始まりは当社が独自に製作した89式小銃の電動ガン用外装キットでした。当時はイラク派遣の頃で、陸上自衛隊はCQBのような至近距離の戦闘訓練に力を入れていました。そのような訓練で電動ガンは有効な教材ですので、外装キットを組込んだ89式型の電動ガンを納入しましたが、間もなく大手メーカーが89式電動ガンを発売したため、当社は外装キットの生産を終了することとなりました。そんな時、意外にも自衛隊には訓練教材としてダミーガンが無いことに気がつき、作ってみようと思いました。


    Photo from Carrot
    Q. ダミーガンの需要はありましたか?

    A. はい。はじめは「電動ガンや実銃で十分じゃないか」という声もありましたが、電動ガンは外観がリアルであるため、実銃とすり替えられる可能性が否定できません。それは自衛隊にとってはNGです。一目でダミーとわかる外観である必要があります。さらに、電動ガンの耐久性ではハードな訓練に耐えられません。頑丈なものである必要があります。
    海外メーカー製のダミーガンが自衛隊で使用されたことがありましたが、破損が頻発しました。加えて重量がリアルではありませんでした。そこで当社は、それらの問題をクリアしたTRGの開発に着手しました。


    Q. TRGの特徴は何でしょうか?

    A. TRGは表層がラバー材質で使用者への安全性が高く、鉄芯が入っており頑丈です。格闘訓練や空挺降下、リぺリング、水中訓練など、トイガンでは壊れるでしょうし、実銃ですらダメージを受けるおそれがありますが、TRGなら破損するリスクは非常に低いです。
    もちろん絶対に壊れないというわけではありません。実は格闘訓練などで重傷を防ぐため、一定の強い力が加わった際には曲がるような強度に敢えて設定してあります。
    また、銃の角ばった部分は少々丸くデザインしてありますので、負傷を最小限に防ぐことができます。しかも、そのデザインはユーザーが違和感を感じない程度に留めています。このような製品デザインの工夫に力を入れています。
    また、重量は弾倉にフルで弾薬を入れた状態になっており、持った感覚もリアルに近くなっています。射撃をしない訓練であれば十分に実銃の代わりとして使っていただけます。
    現に自衛隊では広く使用されていて、特に西部方面普通科連隊での水路潜入訓練では多く使われていますし、夏に公開された第一空挺団の海上降下訓練で行われた上陸訓練のさいは、折曲銃床の89式のTRGが使用されていましたが、これは特注品です。
    水に入る訓練で実銃を使うと手入れに多くの時間と労力が必要になりますが、TRGなら水洗いだけで済みます。手入れ時間が少なくて済む分、訓練時間を増やすことに繋がる様です。


    西部方面普通科連隊(WAiR)の主力を基幹として種子島でおこなわれた自衛隊統合実動演習「29JX」。キャロット製TRGを使用する隊員の姿があった。
    関連記事:陸上自衛隊・西部方面隊が種子島で着上陸訓練を実施。小型偵察ボートを使った夜間訓練の公開は国内初

    Q. 米軍など外国軍にTRGを提案することはありますか?

    A. 現時点では直接的にはありませんが、2014年にパリで開催されたユーロサトリーでTRGを展示しました。HK416型のTRGをコンクリートの床に何度も叩きつけ、それでも壊れないという実演をしたところ、フランス軍関係者が高い関心を示してくれました。さらに、イスラエルで開催された展示会では、現地のCQC格闘集団「SHADOW」が実際にTRGを使ってみて「これはいい!!」と訓練展示してくれました。

    Q. TRGは自衛隊以外でも採用されていますか?

    A. 警察でも採用されています。東京五輪が近づくにつれ、対テロ訓練の展示でMP5のTRGを見ることも増えてきました。

    Q. 89式小銃以外のラインナップには何がありますか?

    A. 航空自衛隊や海上自衛隊では今も主力小銃である64式や、9㎜機関拳銃、ピストルではP220やグロック17などがあります。また銃以外にも、ダミーの銃剣や弾倉、防弾プレートなど多様なラインナップがあります。今後は海外向けの製品も拡充していく予定です。

    Q. 新製品には何を予定していますか?

    A. まずは89式のバージョンアップです。銃床内を空洞にするなどの構造に加えて、重量のバランスを更にリアルにしたいです。やはり格闘訓練や水中訓練ではリアルなバランスが要求されますから。
    あと、曲がることを一切気にせずにミット打ちができる様な強固なバージョンの89式も考えています。安全性を損なわないよう注意しながらも、より剛性の高いモデルを開発中です。
    将来的には、陸上自衛隊の新小銃が決定して写真やスペックが公表されたら、そのTRGの製作に取りかかりたいと思います。
    近年、自衛隊、警察でTRGの需要は増えています。この分野で日本の防衛や治安維持に貢献したいと思っています。


    有限会社キャロットの神崎社長、ありがとうございました。

    キャロット タクティカル・ラバー・ガン公式サイト
    http://www.carrot-tokyo.com/
    なお、TRGは一般人でも購入することが可能である。注文は『PKウェーブ』pk-outlet.com 、『無極堂JAPAN』bushidoshop.jp、 『東京キャロル』tokyocarol.shop-pro.jpまで。

    Text: 野田力

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