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イラク、スーダンなどに3,200名のセキュリティー専門要員が展開。一帯一路と中国のPSC事情

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イラク、スーダンなどに3,200名のセキュリティー専門要員が展開。一帯一路と中国のPSC事情
This photo is for illustrative purposes only.
ドイツ・ベルリンに本部を持つ「メルカトル中国研究機関(MERICS: Mercator Institute for China Studies)」が、『中国監視:一帯一路の守護者たち—中国の民間警備会社(PSC)の国際化』と題した報告書をまとめた。MERICSは、欧州最大の中国研究機関として知られる。

この報告書は、英国の国際戦略研究所(IISS: International Institute for Strategic Studies)が協力し作成されたもので、香港のニュースサイト「アジア・センチネル」は、民間軍事会社(PMC)の代名詞的存在として知られた「Blackwater」の名を引き合いにし、「中国のブラックウォーター型の民間軍隊だ」とする見出しで紹介している。
イラク、スーダンなどに3,200名のセキュリティー専門要員が展開。一帯一路と中国のPSC事情
Image from Mercator Institute for China Studies (MERICS)
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中国は習近平国家主席による「永久政権」の下、野心的な覇権計画である「一帯一路(BRI: Belt and Road Initiative)」を邁進している。「新シルクロード構想」とも呼ばれ、域内インフラの連結性向上、国際金融機関設立による資金手当て、人民元圏の形成を図って沿線に広がる68ヶ国を対象に、中国主導の経済圏構築(経済・外交的支配)を企図している。

計画における中東・欧州への道筋を構築する中で、パイプラインや鉄道、発電所などのインフラ建設が増えるが、それらの多くは不安定地域でおこなわれるため、そのリスク回避のためにPSCの需要が高まっている。

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Image from Mercator Institute for China Studies (MERICS)
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MERICSによると、中国では2009年にPSCが合法化し、2015年には国内で4,000社のPSC登録事業者が確認され、430万名以上のセキュリティー要員が従事しているとのこと。
その後2017年までにその数は更に増えて5,000社を超え、その内の20社は2016年までにイラクやスーダン、パキスタンなど海外に展開し、3,200名ほどのセキュリティー専門要員が展開しているという。

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中国版 PMC、現状と課題

イラク、スーダンなどに3,200名のセキュリティー専門要員が展開。一帯一路と中国のPSC事情
Image from Mercator Institute for China Studies (MERICS)
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また、民間軍事会社の代名詞的存在となった米国ブラックウォーターの創業者、エリク・プリンス(Erik Prince)氏も一帯一路構想の支援を目的に、雲南省と新疆ウィグル自治区に新たな拠点開設を計画した。プリンス氏の率いる香港企業「フロンティア・サービス・グループ社(FSG: Frontier Services Group Ltd)」はその後、中国最大のセキュリティー訓練学校である「国際警備防衛学校(ISDC: International Security and Defense College)」の株式25%を取得している。

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中国のPSCが拡大している背景には、西側諸国よりも値段が安く、政治・外交的な使い勝手の良さが挙げられている。人民解放軍(PLA)が直接関与できない事案に対処し、中央共産党の目指す「国益」を保護することが挙げられ、退役軍人や警察をはじめとした治安部隊の経験者などが多く含まれている。

一方、中国PSCによる海外での活動は国際的に規制されていないことが多く、従事するスタッフも経験値が浅い。そのため、この分野で進んだ欧州各国の影響力に対する挑戦として受け止められ、欧州各国からは国際協調の枠組みに批准するよう求められている。

一帯一路沿線各国で何らかの軍事的衝突があったとしても、中央政府としての責任を回避する狙いがあり、自国の利益のためにも未規制を貫くことが考えられている。

Source: GUARDIANS OF THE BELT AND ROAD - The internationalization of China’s private security companies
China’s Blackwater-Style Private Armies

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