フィラデルフィア警察がP320暴発事件の調査を終了、メーカー提訴を保留
事件は、巡回中の警察官が移動用カートから降りた際、ホルスター内でP320が暴発したというもの。負傷者は出なかったが、SEPTAは急遽代替として350丁のグロックを調達することとなり、17万5千ドル(約1,900万円)の出費を強いられた。
警察官は暴発の際、銃に触れていないと主張していた。このような、引き金に指をかけない状態でのP320事件は全米各地で多発している。
「SIG P320ピストルが暴発し重症を負った」男性が1,000万ドル(約10.8億円)の慰謝料を求めて裁判 - ミリブロNews
特に近年、P320を採用した警察での事故が目立つ。ヴァージニア州では保安官補と警官、2件の暴発事故が発生している他、フロリダ州、コネチカット州、マサチューセッツ州でも事故が報告されている。いずれもホルスター内で銃が暴発したというものだ。
原因について公式な見解は出されていないが、2019年10月11日、ニュージャージー州の退役軍人局員の非番中の事故を調査した関係者が、興味深い発言をしている。
この事故も、他と同じようにホルスター内で銃が暴発している。非番用の銃をホルスター内に入れたままベルトから外そうとしたがうまく外れず、激しく引っ張ったさいに暴発した。事件後関係者が銃をチェックした際、ストライカーの組み込みにガタがあること、またシアとの噛合が少なすぎることに気がついたという。
P320のシアはフレーム中央、後端部のハウジング内にある。トリガーを引くとトリガーバーがシアを下降させ、ストライカーを解放する。
メカニズムのアニメーション動画。1分56秒ごろからシアまわりのメカニズムを見ることができる。
The SIG SAUER P320 Striker Fired Pistol - YouTube
このシアについて、インターネットの掲示板では以前から「シアがストライカーを掴まない」などの不具合を訴えている人がいる。古いフレームメカと新しいシアを組み合わせた際にそのようなトラブルが出た、という報告が多いようだ。
例えばこれはかなり初期のP320のフレームだが、シアピボットピンが貫通する穴がない。フレーム自体色々なバージョンがある。
P320は「落下時暴発問題」の際、シア、トリガー、ディスコネクタの改修を受けている。慣性による動きを抑制するために、これらの部品は大幅な軽量化がされた。
左が旧シア。シアとストライカーの接触部分のディメンションは同じに作られているが、右の新シアは切削量が多く、また一部の形状が変更されている。
シグ社・P320の落下時の安全性を向上させる自主アップデートプログラムを提供開始 - ミリブロNews
一般的に、量産品のパーツを変更する際は異なるバージョンの部品同士を組んでも不具合が起こらないかどうか、検証とテストが行われる。P320は、米軍の採用と共に各地の司法執行機関が一気に採用をはじめており、そうした混乱の中で十分なテストができなかった可能性は否定できないだろう。
Source:
SEPTA cop whose gun mysteriously fired cleared of wrongdoing, litigation against gunmaker ‘pending’ - WHYY
Text: Chaka (@dna_chaka) - FM201912
Chaka (@dna_chaka)
世界の様々な出来事を追いかけるニュースサイト「Daily News Agency」の編集長。
関連記事