イギリスのエアガン規制を巡る動き

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パリの同時多発テロの影響を受けて、隣国のイギリスでもエアソフトガン規制に関して新たな動きが出てきた。イギリス法委員会は、銃器の「致死性」のレベルを1J(ジュール)にすると発表したのだ。

イギリスでは、2011 年に、BASC(イギリス安全射撃委員会・・・British Association for Shooting and Conservation)などの団体の意見を聞き、エアソフトガンの銃口での運動エネルギーを1.3から2.5J の範囲にするように決定し、実銃とエアガンの「グレーゾーン」をなくしたのだが、そのときの取り決めよりもさらに厳しい基準を設けることとなった。

しかし、ここで問題となるのは、過去に1.3-2.5J 以上をエアガンと規定した後に、改めて1J以上を「致死性」と規定したことで、既存のエアガンや愛好家に例外的措置が設けられるかどうかである。

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1J規制の問題点
すでにエアガン業界団体と愛好家団体は、さまざまな理由からエアガンの1J規制は業界に深刻な影響を与えると発言してきた。業界と愛好家にとって大切なことは、エアガン規制が「テロ対策」や「治安維持」の、安易な解決策として行われないようにすることである。

エアガン販売業者や愛好家がテロリストの卵などと考えられるようになってはならない。当局の「行き過ぎた対応」は、業界人の取り締まりを簡単にしてしまうだろう。5つの問題が考えられる。

1 つ目の懸念は、イギリスにおけるエアソフトガンの流通事情は、販売量の85 パーセントが通信販売であり、エアガンの輸送中に当局のチェックが入り、「実銃」と判定されて没収などの行政措置が行われるようになると、小売業界に深刻な影響を与えることは間違いない。

2 つ目は、エアガンが「実銃」扱いを受けることで、第三者賠償責任保険(third party liability insurance)の免責事由が変わってくる点である。エアガンが実銃になれば、保険会社のサバイバルゲーム関連の保険の販売・設定に消極的になり、その結果、業界が縮小する可能性がある。

3つ目は、イギリスで流通しているエアガンのほとんどにフルオート射撃機能が取り付けられており、それらの銃口での運動エネルギーは1J以上である。1J規制が適用されると、これらのエアガンがすべて1968年に制定された火器法の第5条1項aにより、国務長官の許可なく所有することが禁止され、違反者は懲役5年未満の禁固刑が課されることとなる。英エアソフトガン愛好家協会によると、このような低威力のエアガンを禁止兵器(Prohibited Weapon)に分類しようとすることに疑問を感じるという。

4つ目は、エアガンの誤用による重大事件や深刻な傷害事件などが発生していないのに、これらのパワー規制に何の意味があるのか。

5つ目は、エアガンの規制は、銃口での運動エネルギーの大きさにばかり拘泥している。大切なことは、エアガンがどのように使われるかではないか?ルールを守ったサバイバルゲームと子供や動物を虐待する目的の乱射とは、性格が全く違う。

エアガンの存在を快く思っていない有識者たちは、業界や愛好家が1J規制を反対するならば、エアガンに関して何らかの法律を作るべきだと主張している。彼らの意見の根拠は、公訴局の「武器」の定義である。つまり、暴力犯罪防止法(Violent Crime Reduction Act)は1J を致死性の基準としているため、1J以上のものは、外観や発射機構の区別なしに「武器」としてみなすべきというのだ。この考え方は、皇后射撃巡回裁判所判事(Her Majesty's Council of Circuit Judges)、銃器取扱協会、英安全射撃委員会などの団体も同様である。
エアガン業界の意見
エアガン協会としては、暴力犯罪防止法の規定に基づき、1J 以上のエアガンが「武器」であり、何らかの規制(1J 規制であっても)が必要であることは認める。

しかし、この規制を実施するにあたり、業界や世間に相当な混乱が起こることも忠告したい。なぜなら、エアガンの誤用による重大事件が発生していない現在、テロや治安への脅威として、これらの規制がどれほどの効果があるか疑問である。それゆえ、暴力犯罪防止法の中に、エアガンに関する例外的措置や条項を作ったとしても、治安になんら影響を与えるとは思えない。

エアガン業界の意見を要約すると、

(1)銃身を持つ武器で、発射口で計測した運動エネルギーが1J以上のエネルギーを持つものを「実銃」とみなすならば、これらの規制・法律の中でエアガンを例外とする条項を盛り込むべきであり、その過程でどれほど法律を綿密に作れるかどうかが、規制の実効性や効率性に大きな影響を与えると考える。エアガン業界としては、公衆の安全・治安を保障した上で、業界に与える影響を最小限にしたい。

(2)規制をより実効力のあるものにするには、何がエアソフトガンで何が実銃なのかをはっきりと定義することである。現在、エアソフトガンに関して法律的な定義が存在しない。

英エアガン販売協会は、以下のような定義を提案している。エアガンや実銃のイミテーションは、すべて模造火器とし(実物に酷似しているかどうかを問わず)、以下の用途に限定するものを指す。

(1)直径8mm 以下の球状のプラスチック粒を放出する機能を持つもの
(2)この放出された粒にかかる運動エネルギーが、発射口で計測したときに、単発の放出で2.5J以下、連続の放出で1.3J 以下のもの。
(3)エアガン使用における「許される行為」と「許されない行為」を細かく規定し、許されない行為に関して規制や処罰を行うべきである。

世界各地でエアガンを規制する動きが活発になってきている。今後の動きに注視しなければならない。

Firearms Law – Reforms to Address Pressing Problems / UK Law Comission 2015/12/15
Text: 友清仁 - FM201512

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