【特集】米海軍クレーン研究所の資料を基に紐解く、進化を重ねてきた米軍ライフル「M14EBR」
5.56mmよりも長射程かつ強力な7.62mm弾を用い、中距離の狙撃で部隊を援護しつつCQBを行える取り回しのよさをもつ選抜射手ライフル(DMR)が高い注目集めている。最近ではM110などAR-15プラットフォームのものが増えてきているが、それ以前は改修を施されたM14小銃がこの用途に用いられてきた。今回はそうした増強小銃、いわゆるEBR(Enhanced Battle Rifle)について、海軍クレーン研究所の資料を元に紹介する。
EBRの成立
第二次世界大戦以降、小口径高速弾頭が諸国で相次いで採用されたが、一方で7.62mm弾には根強い人気があった。M1ガーランドやM14は5.56mmのM16に取って代わられたが、それ以降、例えばアメリカ陸軍ではM14(民間向けの「ナショナル・マッチ」バージョン)を高精度化改修したM21がM24採用まで狙撃銃として用いられ、その発展型のM25(XM25)は「軽狙撃銃」として陸海特殊部隊で使用されるなどしている。
M14やその改修型にはストックの耐候性、22インチという銃身の長さ、拡張性の低さが問題となった。木製ストックは環境の変化に弱く、またグラスファイバー製ストックはベディング(ストックとメカの接合の調整)が難しく、分解結合した際にゼロ点が容易に狂うという弱点があった。
2000年ごろ、海軍特殊部隊からM14小銃の強化の要望を受け、マイク・ロック・ライフル・バレルズ社のマイク・ロックとジム・リボーディが最初のMk.14 Mod.0 EBRを組み上げた。
アルミシャーシと樹脂ボディで作られた極地戦用銃床に18インチ銃身を組み合わせたM14。
セージ社のストックを用いた2002年頃のプロトタイプ。
2003年、スミス・エンタープライズ(SEI)のロン・スミスがM14 EBR(Mk14. SEI)を組み上げる。これはマイク・ロックのものよりも評価が高く、後にスプリングフィールド・アーモリー社と海軍クレーン研究所が共同で開発した銃のベースとなった。
クレーン研究所のデヴィッド・アームストロングはセージ・インターナショナル社のM870用ストックを改良したものを用いた。アルミブロックに直接レシーバーが接触する構造で、分解結合の際にベディングが狂うこともなく命中精度も大幅に向上したという。
2004年頃のプロトタイプ
スミス・エンタープライズ(SEI)のロン・スミス
海軍・空軍のMk 14 Mod 0。クレーン研究所開発。2004~2005。
後にMk.14 Mod.0の銃身を22インチに再び戻したものが陸軍のEBRや海兵隊のM39 EMRのベースとなった。これらは同一EBRの改修や番号違いではなく、あくまでも別モデルであるが、海軍の研究結果を大いに参考にし、開発者同士の交流もあったようだ。
空軍のMk.14 Mod.0 (Mk 14 SEI)。SEI社生産のもの。2004~2008。
沿岸警備隊のM14T。クレーン研究所開発。2005。
海軍のMk.14 Mod.1。クレーン研究所開発。2006。
海兵隊のM39 EMR。PWS開発。2007。狙撃手のサポート用銃器としてM14の高精度化が海兵隊精密射撃火器部門(PWS)によって行われた。
陸軍のM14 EBR-RI。ロックアイランド造兵廠と陸軍TACOM開発。2008~2011。アフガニスタンで5.56mmの射程不足に悩まされた陸軍も、ストックされていたM14を復活させEBRを開発した。6200丁と大量に生産された。
陸軍のM14 EBR-RI NM。ロックアイランド造兵廠と陸軍TACOM開発。2010。「NM」は「ナショナルマッチ」すなわち高精度化したことを表す。
海軍のMk.14 Mod.2。クレーン研究所開発。2011。ヘビーバレル化され耐久性・精度が増すと共に、夜戦能力を高められた。
元々は民生用のパーツを使用した改修モデルであるため、非常に多様なモデルが存在している。M14の民生版であるM1Aにはファンも多く、中には一からパーツを集めて軍向け仕様を再現するコレクターも存在するようだ。
EBRの代名詞でもあるセージ社はストック形状やバレルによって、何種類かのシャーシを制作している。昔はアルミニウムであったが最近はマグネシウム合金を使用する軽量化なモデルもある。
中にはブルパップ化するシャーシや銃床なども存在する。
ジャガーノート・タクティカル社のRogueシャーシシステム。
ショートライフル・ストックシステム社のブルドッグ762 G4シャーシシステム。
そしてもちろん、従来のライフルらしい形状のストックやセッティングも人気である。
McCANN社のカーボンファイバーストック。メタルシャーシを埋め込み軽量さと分解・結合の際の精度維持を両立させている。
マクミラン社のMFS-14モジュラー・タクティカルシステム
JAE社のJAE-100 G3ストック
2008年のSHOT SHOWにて、アキュラシー・インターナショナル社の北米代理店であるTacPro Shooting Centerが展示していたM14AICS。
ProMag Industries社のARCHANGEL AAM1Aストック。
EBRは火急の求めに応じてM14を復活させた「暫定的」なもので、それだけにバリエーションが非常に豊かなモデルである。アメリカ軍は現在、歩兵用小銃全体の大口径化を進めており、その時はこのEBRでの経験・データが大きく用いられることになると思われる。
Text: Chaka (@dna_chaka)
第二次世界大戦以降、小口径高速弾頭が諸国で相次いで採用されたが、一方で7.62mm弾には根強い人気があった。M1ガーランドやM14は5.56mmのM16に取って代わられたが、それ以降、例えばアメリカ陸軍ではM14(民間向けの「ナショナル・マッチ」バージョン)を高精度化改修したM21がM24採用まで狙撃銃として用いられ、その発展型のM25(XM25)は「軽狙撃銃」として陸海特殊部隊で使用されるなどしている。
M14やその改修型にはストックの耐候性、22インチという銃身の長さ、拡張性の低さが問題となった。木製ストックは環境の変化に弱く、またグラスファイバー製ストックはベディング(ストックとメカの接合の調整)が難しく、分解結合した際にゼロ点が容易に狂うという弱点があった。
2000年ごろ、海軍特殊部隊からM14小銃の強化の要望を受け、マイク・ロック・ライフル・バレルズ社のマイク・ロックとジム・リボーディが最初のMk.14 Mod.0 EBRを組み上げた。
アルミシャーシと樹脂ボディで作られた極地戦用銃床に18インチ銃身を組み合わせたM14。
セージ社のストックを用いた2002年頃のプロトタイプ。
2003年、スミス・エンタープライズ(SEI)のロン・スミスがM14 EBR(Mk14. SEI)を組み上げる。これはマイク・ロックのものよりも評価が高く、後にスプリングフィールド・アーモリー社と海軍クレーン研究所が共同で開発した銃のベースとなった。
クレーン研究所のデヴィッド・アームストロングはセージ・インターナショナル社のM870用ストックを改良したものを用いた。アルミブロックに直接レシーバーが接触する構造で、分解結合の際にベディングが狂うこともなく命中精度も大幅に向上したという。
2004年頃のプロトタイプ
スミス・エンタープライズ(SEI)のロン・スミス
海軍・空軍のMk 14 Mod 0。クレーン研究所開発。2004~2005。
後にMk.14 Mod.0の銃身を22インチに再び戻したものが陸軍のEBRや海兵隊のM39 EMRのベースとなった。これらは同一EBRの改修や番号違いではなく、あくまでも別モデルであるが、海軍の研究結果を大いに参考にし、開発者同士の交流もあったようだ。
空軍のMk.14 Mod.0 (Mk 14 SEI)。SEI社生産のもの。2004~2008。
沿岸警備隊のM14T。クレーン研究所開発。2005。
海軍のMk.14 Mod.1。クレーン研究所開発。2006。
海兵隊のM39 EMR。PWS開発。2007。狙撃手のサポート用銃器としてM14の高精度化が海兵隊精密射撃火器部門(PWS)によって行われた。
陸軍のM14 EBR-RI。ロックアイランド造兵廠と陸軍TACOM開発。2008~2011。アフガニスタンで5.56mmの射程不足に悩まされた陸軍も、ストックされていたM14を復活させEBRを開発した。6200丁と大量に生産された。
陸軍のM14 EBR-RI NM。ロックアイランド造兵廠と陸軍TACOM開発。2010。「NM」は「ナショナルマッチ」すなわち高精度化したことを表す。
海軍のMk.14 Mod.2。クレーン研究所開発。2011。ヘビーバレル化され耐久性・精度が増すと共に、夜戦能力を高められた。
元々は民生用のパーツを使用した改修モデルであるため、非常に多様なモデルが存在している。M14の民生版であるM1Aにはファンも多く、中には一からパーツを集めて軍向け仕様を再現するコレクターも存在するようだ。
EBRの代名詞でもあるセージ社はストック形状やバレルによって、何種類かのシャーシを制作している。昔はアルミニウムであったが最近はマグネシウム合金を使用する軽量化なモデルもある。
Photo from SAGE International Ltd. Web Page
Photo from SAGE International Ltd. Web Page
中にはブルパップ化するシャーシや銃床なども存在する。
ジャガーノート・タクティカル社のRogueシャーシシステム。
M-14 Rogue Chassis | Juggernaut Tactical - YouTube
ショートライフル・ストックシステム社のブルドッグ762 G4シャーシシステム。
Photo from Short Rifle Stock System
そしてもちろん、従来のライフルらしい形状のストックやセッティングも人気である。
McCANN社のカーボンファイバーストック。メタルシャーシを埋め込み軽量さと分解・結合の際の精度維持を両立させている。
マクミラン社のMFS-14モジュラー・タクティカルシステム
JAE社のJAE-100 G3ストック
2008年のSHOT SHOWにて、アキュラシー・インターナショナル社の北米代理店であるTacPro Shooting Centerが展示していたM14AICS。
ProMag Industries社のARCHANGEL AAM1Aストック。
ARCHANGEL AAM1A FOR SPRINGFIELD M1A/ M14 - YouTube
EBRは火急の求めに応じてM14を復活させた「暫定的」なもので、それだけにバリエーションが非常に豊かなモデルである。アメリカ軍は現在、歩兵用小銃全体の大口径化を進めており、その時はこのEBRでの経験・データが大きく用いられることになると思われる。
Text: Chaka (@dna_chaka)
Chaka (@dna_chaka)
世界の様々な出来事を追いかけるニュースサイト「Daily News Agency」の編集長。
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