ゲームが作る未来の軍隊―テレビゲームでシミュレーションする米陸軍
現在、アメリカ軍では画期的な取り組みをしている。それはテレビゲームを使った作戦シミュレーションである。
Photo Credit: U.S. Army courtesy photo
このテレビゲームを使ったシミュレーションは、陸軍内でオーバーマッチ作戦と呼ばれ、陸軍訓練教義軍団(Training and Doctrine Command・・・TRADOC)、陸軍研究開発司令部が管轄する、正規の作戦である。この作戦は、初期合成プロトタイプ効果(Early Synthetic Prototyping effort)内のゲーム環境で、さまざまな装備や兵器をテストし、その結果を開発者や技術者に提供するものである。
「従来のシミュレーションは、非破壊検査や耐久試験などでしたが、オーバーマッチ作戦では、戦場での有効性を検証するものです。それゆえ、テレビゲームはまったく適した媒体なのです」。ブライアン・ボグト中佐(陸軍 訓練・ドクトリン指令統合センター)は語る。
Photo Credit: U.S. Army courtesy photo
同作戦では、8対8の模擬戦を現実に即したシナリオで行い、兵器の性能をチェックする。
「テレビゲームの模擬戦を通して、兵士は装備や作戦、部隊編成が最も有効かどうかを知ることができるのです」。マイケル・バーネット作戦責任者は語る。シミュレーションでは、ときには敵が優勢な条件で戦うこともある。「ゲームの結果から、何を使い、何を変更し、何を捨てるべきかをすぐに理解することができるのです」。また単なる戦闘のシミュレーションだけではなく、個々の兵器の威力や性能なども自由に変更することができる。「たとえば装甲車のエンジンの性能をゲーム内で変更すると、その装甲車の加速や燃費、搭載燃料量などまですぐに分かります」。
これらはゲーム内のオプションであり、簡単に選択して、すぐに戦場へ投入することができる。もちろん変更の度合いは、技術者が妥当性を判断したものに限られる。
ゲーム結果は収集され、新しい戦術の評価や更なる研究のために活用される。たとえば車両/武器のバリエーションやフルスケールプロトタイプを作るまでのコストが分かるという。兵器や武器システムを物理的に製作する年月は膨大であるが、ゲーム内なら数秒で変更・採用することができる。
将来は、戦争ゲーマーが兵器の評価や作戦を考案する士官になっているかもしれない。
Text: 友清仁 - FM201709
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