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「突入しないCQB」テクニック「リミテッドエントリー」トレーニングレポート

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「突入しないCQB」テクニック「リミテッドエントリー」トレーニングレポート


閉所戦闘・CQB・ルームエントリーとそのテクニックが生まれてから、既に長い時間が経過しており、実際の技術も大きな変化を遂げている。中でも最近注目されているのが「リミテッドエントリー」あるいは「リミテッドペネトレーション」と呼ばれる手法である。このトレーニング会が2020年3月14日、高槻北部のフィールド「ボーダーゾーン」にて開催されたので、取材に赴いた。

いわゆる「ルームエントリー」は、概ね以下の動画のようなものである。先頭を行くポイントマンが入り口から侵入し死角を制圧する。2番手以降はその前の味方の死角をつぶしていく、というのがおおよそのメソッドである。



この手法についてはいくつかの欠点が議論されている。最も大きな弱点は、部屋の中の様子が分からないまま中に入らなければならないという点だ。ポイントマンは広いエリアを制圧の対象としなければならないが、敵の位置が分からないため的を絞ることができない。

また防御側は戸口に火力を集中することができるが、攻撃側は最初、先頭の人間しか火力を発揮することができず、数の優位を作ることが難しい。

ポイントマンがエントリー後素早く方向転換をしたり、戸口から敵が見えた場合は即射撃を開始する、という選択肢はあるが、これをスムーズにサポートするにはチーム全体が一定の技量を持っていなければならない。

リミテッドエントリーは従来の手法の補完的な存在として、閉所戦闘における新たな選択肢を提示するコンセプトである。イスラエルの軍事組織で大体的に取り入れられているのは以前ご紹介した通り。最近ではアメリカ軍やLEでもこの手法を用いている姿を見かけることがある。

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リミテッドエントリー、あるいはリミテッドペネトレーションは「リミテッド(限定された)」という呼ばれ方が示すとおり、室内に極力入らないメソッドである。「戸口から部屋を大きくクリアリングし、最後に残った狭いエリアのみを突入してクリアする」というのが基本的なコンセプトだ。

従来、戸口や窓などの入り口は射線が集中する「フェータルファンネル」と呼ばれここでストップすることはタブー視されてきた。しかしこれは相手にとっても同じことであり、逆に「入らない」ことで発生するメリットを利用するのがリミテッドエントリーである。

メリットの例。戸口からの射撃が前提であるため、このように多人数が一気に射撃できる。

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Screenshot from Cherries CQB YouTube Video
Cherries CQB YouTube Video

リミテッドエントリーのコンセプトは非常にシンプルで誰にでも理解できる。当日の様子を紹介しつつ、コンセプトを解説しよう。

会場となったサバイバルゲームフィールド「ボーダーゾーン」いわゆるCQBフィールドであり、ルームエントリーの練習に適したバリケードの配置となっていた。
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今回の講師、C-Tours代表の白石氏(左)とカギッキ氏
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当日は新型コロナウィルスの流行を鑑み、全員に体温測定が課せられた。
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セーフティブリーフィング後、まずゼロインが行われた。
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左右の調整をするとともに、様々な距離における着弾点を把握してもらった。
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リミテッドエントリーの基本的な技法である「-45度・90度・45度・ゼロ度のクリアリング」。目と銃口は同時に制圧エリアに入り、敵を視認すると同時に射撃することが大前提である。一度銃口がスイープした角度から戻らず、制圧エリアを広げていく。
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従来のメソッドでも「カッティングパイ」が行われるが、わずか4歩で終了する点、索敵ではなく制圧が主目的である点が大きく違う。

このクリアリングについてはライフル・ハンドガンいずれとも共通の動きとなる。左右入れ替えた際も持ち手をスイッチせずクリアリングしていくことになるので、覚えることが少なく習熟しやすいというメリットがある。
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戸口で動かずクリアリングすることの是非に関しては議論があるが、この写真の通り、戸口から入る側はバリケードの恩恵を十分に受けることができ、壁の強度次第では強力なメリットとなる。
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ブルーガンを使って姿勢の練習とチェックをする参加者。他の参加者とペアになり肩や足が先に出ないかどうかをチェックしていった。
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クリアリングする際、ヒジやかかと、装備が目と銃よりも先に出てしまわないよう、姿勢や壁との感覚を覚える必要がある。特にライフルでは両手で構えるためにリーンした姿勢を維持しにくく、崩れやすい傾向にある。
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左右対称であるから、2人組の場合、このように同時にクリアリングを行うこともできる。戦闘では数的優位が問題となる以上、多人数で同時に突入できるリミテッドエントリーには意味がある。
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リミテッドエントリーにおけるダブルガン。突入の際に立ってからエントリーせずに済むよう、前の方が立ち、後続のほうが座るのが原則である。
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従来の方法では相手にこちらの姿を見せてからのスピードが注目されるが、リミテッドエントリーでは戸口にとりついた時点からのスピードが重視される。姿を見せずに奇襲するのではなく、姿を見られて対応されるまでの間に制圧してしまう方法である。
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そうすることで、こちら側は注目するエリアを減らして集中することができ、逆に敵の死角を増やしていくことができる。このエントリー段階では、部屋中央の死角はなくなり、敵はもはやこちらが入ってくるタイミングを掴むことができない。対して突入側はドアの内側の僅かな部分のみが死角となっている。右側が通常のクリアリングと同時に左側が先に突入してしまえば、死角に敵がいても銃口をそちらに振らせることができ、より安全なクリアリングが可能になる。
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最後にレーザーピストルを使用した1vs1のフォースオンフォース形式の練習が行われた。攻撃側は外から、防御側は部屋の中で待機し、10秒以内でクリアできるかどうかという内容である。
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「撃たれる瞬間まで見えない」「普段よりも素早くクリアリングできた」など、リミテッドエントリーの効果について実感できた人が多かったようだ。
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リミテッドエントリーは決して万能の技術ではない。例えば、長い通路の突き当りにドアがあって、左右に余裕がない場合などには用いることができないし、射撃の応酬が発生することを前提としているため捕虜がいるようなシチュエーションでは使いにくいだろう。敵の配置や人数といった戦術的環境はもちろん、戦闘の目的や交戦規定、法律といった戦略的な要素によっても使用できるかどうかは影響を受ける。

しかし、リミテッドエントリーは非常に強力なテクニックであり、従来のルームエントリーテクニックの弱点を補完できるものである。そのコンセプトを自分の技術のツールボックスに収めておけばより戦闘力を発揮できるのは間違いない。最新のCQBスタイルを再現するような場合にも、有効なのではないだろうか。
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