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地雷原の中で冷静に行動し、味方を救った米陸軍 EOD の話

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地雷原の中で冷静に行動し、味方を救った米陸軍 EOD の話
U.S. Air Force photo/Airman 1st Class Pedro Mota
Image is for illustration purposes only.
2013年10月5日、第28野砲中隊の基地のゲートで3つの爆発が起こった。この爆発は、タリバンの影響下にある女性がIED(Improvised Explosive Device・・・即製爆弾)と自身が身に着けている自爆ベストを爆破したものであった。この爆発により、野砲中隊の兵士8名が負傷した。EOD(Explosive Ordnance Disposal・・・爆発物処理)のジェフリー・ドーソン軍曹は、すぐに現場に駆けつけ、付近に他のIEDがないことを確認し、負傷者の手当てを行った。

Staff Sgt. Jeffery M. Dawson, shown in uniform, received the Distinguished Service Cross, the nation's second highest medal for valor, during a ceremony on Fort Benning, Georgia, Feb. 17, 2015.
負傷者の手当てを終え、別のIEDが付近にないことを確認すると、直ちに周囲のクリアリングを行うため、ドーソンは仲間と共に基地の外へ出た。

しばらく基地の周りを捜索すると、自爆女性を運んできたと思われるタリバン兵の一群と遭遇した。すぐに銃撃戦となったが、アメリカ軍の火力が大きく、多勢に無勢と思ったのか、タリバンは退却を開始した。もちろん、ドーソン軍曹たちは追撃する。

しかし、これが「罠」であった。タリバンは、M4カービンの射程ギリギリの距離を保って、撃っては逃げ、逃げては撃つという動作を繰り返し、ドーソンたちをたくみに地雷原の真ん中に誘い出していたのだ。

ある地点で、タリバンは退却を止め反撃を試みた。銃撃戦は、ドーソン軍曹たちも望むところであり、銃撃フォーメーションを取るべく、左右に展開した。
そのときである。タリバンの撃った銃弾が地雷に命中し大爆発を起こした。軍用犬のジャニに破片が直撃し、ジャニは息絶えた。悲劇はそれだけではなかった。左右に展開した兵士が次々と地雷を踏み、あちこちで爆発が起こった。

メディックの女性兵士が負傷者へ近づいたとき、彼女も地雷を踏んでしまい、悲鳴を上げる間もなく、轟音と共に消滅した。EODのドーソン軍曹自身も地雷の破片をヒザに受け、負傷した。

あたりに響く轟音と負傷者のうめき声が溢れる中でも、EODのドーソン軍曹は冷静に、そして的確に指示を出した。「みだりに動くな!その場に伏せろ!」。
あたりは阿鼻叫喚の地獄であったが、唯一の幸運は、アメリカ軍が地雷原の真ん中で立往生している様を確認したタリバンが、煙のように退却してしまったことである。銃撃が継続されていたら、ドーソンたちは全滅していただろう。

From left, Staff Sgt. Jeffery M. Dawson, Sgt. Bryan C. Anderson and Spc. Samuel Crockett pose for a photo on Kandahar Airfield in Afghanistan. Dawson and Anderson received the Distinguished Service Cross, the nation's second highest medal for valor, during a ceremony on Fort Benning, Georgia, Feb. 17, 2015. Crockett received a Silver Star for valor last year.
ドーソン軍曹は、味方の被害を確認した。数回の爆発により、指揮官のジェニファー・モレノ中尉がすでに戦死しており、ドーソンが部隊指揮を執った。生き残った通信兵に救助ヘリと援軍を要請させ、自分は負傷者の手当てと遺体の回収を開始した。

地獄のような環境の中でも、EODのドーソンは、地雷原での移動方法、「足跡をたどる」という基本に、忠実に行動した。

まず、30歩の足跡をだどり、ヒザから下を吹っ飛ばされたジョセフ・ピーター軍曹に近づき、止血した上で地雷原から脱出させた。さらに10歩をたどって地雷原の真ん中でおびえているベンジャミン・ピニック上等兵を脱出させ、それから20歩と25歩をたどり、モレノ中尉とコーディー・パターソン伍長の遺体を回収した。

ドーソンは、モレノ中尉のそばへ行く途中、3個のIEDを発見した。「IEDは、作動ワイヤが地面に現れていたため、地面を注意深く見ることで発見できました。作動装置は、感度の低い金属反応式であり、地雷の上に取り付けられていました」。

ドーソン軍曹は、生き残っている兵士に対し、ヘリコプターの着地地点までのルートが確保されるまで動かないように指示し、自分は、金属探知機とライトを使ってIEDを捜索した。これにより、兵士の何名かは安全な着地地点まで脱出することができた。
しばらくすると、救助ヘリと応援部隊がやってきた。彼らは着陸するとすぐに負傷者の元へ走った。悲劇が再び起こった。どうやら応援部隊に、地雷原の情報が伝わっていなかったらしい。「オレが示したルート以外、絶対に侵入するな!」。ドーソンは再び怒鳴った。救助活動は再び膠着した。

応援部隊が地雷の犠牲になったことで、本隊から数名のEODが派遣されてきた。複数のEODは、ドーソン軍曹の情報を元に地雷原の脱出ルートが何本も作った。それから2時間後、負傷者と遺体をすべて回収することができた。

ドーソン軍曹は、自身も負傷しているにもかかわらず最後まで現場に残り、部隊の脱出に多大な貢献をした。

Col. Patrick Ellis, center, commander of the 3rd Battalion, 75th Ranger Regiment, and U.S. Army Vice Chief of Staff Gen. Daniel B. Allyn applaud Staff Sgt. Jeffery M. Dawson at his Distinguished Service Cross ceremony on Fort Benning, Georgia, Feb. 17, 2015.
後に従軍記者がドーソンにインタビューをしたのだが、返ってきた言葉は意外なものだった。「基地に戻ったとき、すべての戦死者の棺に、その遺体を暖めるために、アメリカ国旗が掛けられている場面を、私は一生忘れることはないでしょう」。

ドーソンは十字勲章を授与された。

20th CBRNE Command Public Affairs 2015/02/17
Text: 友清仁 - FM201507

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