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「アメリカン・スナイパー」故クリス・カイル氏、内部資料と自叙伝でメダル個数が合わず騒動に

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「アメリカン・スナイパー」故クリス・カイル氏、内部資料と自叙伝でメダル個数が合わず騒動に
Photo: Chris Kyle
米軍史上最多のキル数記録を持ち、イラク戦争時には「ラマディの悪魔」として敵から恐れられた、元海軍特殊部隊 SEAL スナイパーの故クリス・カイル (Chris Kyle) 氏。
英雄的扱いを受けたカイル氏に対し、軍から贈られたとされるメダルの数と、自叙伝の中で記された個数とが合致せず、現在ちょっとした物議を醸している。

カイル氏は、1999 年から 2009 年までの 10 年間に 4 度のイラク派兵を経験。軍を退役した 2013 年 1 月に、自叙伝「ネイビー・シールズ最強の狙撃手 (原題: American Sniper: The Autobiography of the Most Lethal Sniper in U.S. Military History) 」をリリース。その後、2015 年 1 月には「アメリカン・スナイパー (American Sniper) 」のタイトルで映画化され、大ヒットの中で全米公開されている。

カイル氏のメダル数に対して疑惑の目を向けたのは、米ネットメディアのインターセプト (Intercept) 。インターセプトが入手した海軍内部資料によると、カイル氏は「シルバースター 1 個とブロンズスター 3 個のみ」しか確認できていない。

「アメリカン・スナイパー」故クリス・カイル氏、内部資料と自叙伝でメダル個数が合わず騒動に
American Sniper: The Autobiography of the Most Lethal Sniper in U.S. Military History
一方のカイル氏は、自ら「全てを伝えた」とする自叙伝の中で、「私は 2 つのシルバースターと 5 つのブロンズスターと共に SEAL としてのキャリアを終えるだろう (I would end my career as a SEAL with two Silver Stars and five Bronze [Stars], all for valor.) 」の一文を記しており、海軍の資料に示されたメダル個数との乖離が確認できる。

ちなみに、シルバースターは米軍で 3 番目に高位の勲章であり、ブロンズスターは戦場におて、英雄的または功績ある行動を示した兵士に対して贈られる勲章となる。

また、インターセプトによると、アメリカン・スナイパーの出版前に、カイル氏は少なくとも一度、メダル数のカウントについて間違いを注意されたことがあるとしている。この指摘については、アメリカン・スナイパーの原稿が上がり、SEAL 隊員らに配布されたところ、カイル氏の前指揮官である 1 名の SEAL 隊員が「2 個のシルバースター」という記述は誤りだと指摘している。これについては、カイル氏自身が出版の前に修正をしていたとのこと。なお、この指摘した指揮官については、現在も現役で活躍しており、尚且つ本件と直接かかわりの無い立場にあることから、匿名での紹介にとどまっている。

また、現役・退役の SEAL 隊員の中にはカイル氏のメダル数の水増しについて、「戦場での功績を汚している」として、不満をくすぶらせていたメンバーもいたとする記述も散見できる。
但しここからが物議に対する答えに近いのかもしれないが、インターセプトの記事を読み解く限りでは、一概にカイル氏が武勲を振りかざす為にメダル数を水増ししたとは言い切れなさそうな側面が見えてくる。

米軍兵士が除隊する際に「DD Form 214」という書類が発行されるが、カイル氏の除隊書類には「2 個のシルバースターと 6 個のブロンズスターの授章」と記述がなされていたという。これは、自叙伝中にあったカイル氏が主張するメダル数とも、海軍が公式文書の中で示しているメダル個数とも合致しない。

DD214 については「 (本来は) DD214 上に示された情報は公式な記録とマッチすべきだ」とするも「そのプロセスは複数の人の作業を挟むため、幾つかの間違いを引き起こすかもしれない」「軍とは切り離された事務員が、司令部とは別の場所で書類を作成している」「間違いがあるのはそう珍しいことでも無い」とする軍関係者のコメントなどを添えた複数のメディア記事が確認できる。

カイル氏が実際のところ受け取ったメダルの数が何個かは現時点で明確ではないが、軍事情報サイトの中には「(いずれにしても) カイルは米国にとって英雄だ」とするコメントも寄せられている。

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