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アラブ首長国連邦(UAE)に雇われた米国の「傭兵」企業がイエメンで政敵排除に直接介入

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アラブ首長国連邦(UAE)に雇われた米国の「傭兵」企業がイエメンで政敵排除に直接介入
米国の傭兵企業が、アラブ首長国連邦(UAE)を契約先として、軍特殊部隊経験者らをイエメン内戦へ送り込み、その政敵排除に介入していたことがバズフィードニュースのスクープによって明らかとなった。現在までに映像も公開されている。「米国の傭兵によって実行された」計画が明るみになったのはこれが初めてとなる。
アラブ首長国連邦(UAE)に雇われた米国の「傭兵」企業がイエメンで政敵排除に直接介入
Photo from Abraham Golan via BuzzFeed News
「イエメンの標的暗殺計画(targeted assassination program in Yemen)」を実行していたのは、デラウェア州に登記されている『スピアー・オペレーションズ・グループ社(Spear Operations Group LLC)』。同社は2015年から2016年の少なくとも1年の間に、「アル=イスラ(Al Islah)」のメンバー×30名弱の暗殺計画を実行していたとみられている。

スピアー社最初の襲撃作戦は2015年12月29日。港湾都市「アデン」でイスラム教徒の政党リーダーであった「アンサーフ・アリ・メイヨ(Anssaf Ali Mayo)」氏の暗殺を計画し、12名から成る傭兵チームを編成した。この12名の内の3名は米国人で、残る大半は元フランス外人部隊のメンバーだったという。そして3名の米国人の内訳は、①元メリーランド州兵・陸軍特殊部隊員、②海軍特殊部隊SEALの予備役で元DevGru隊員、③元CIAの「特別活動課(SAD: Special Activities Division)」に従事していた人物とされる。
なお、スピアー社を創設した「エイブラハム・ゴラン(Abraham Golan)」氏自身もフランス外人部隊出身者であり、海外派兵を経験している人物との報道もある。
スピアー社は、この作戦でメイヨ氏の殺害には至らなかったものの、その後数か月間に渡ってメイヨ氏を地下に追い込んだことから作戦は一定の成果を得たと考えている。

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12名の傭兵は手に「23名のお尋ね者リスト」を示すカードが配られていたとのことで、それぞれのカードにはターゲットの政治的なポジションの他、勤務地や自宅住所など出没ポイントが記載されていたという。リストの内の数名は「テロリスト」と認知されていた人物だったとするも、全ての人物がそういった危険人物であったかどうか、現場の傭兵たちが関知しない中で粛々と作戦がおこなわれていたようだ。
これについてゴラン氏は、「(リストは)ワシントン(=米国)が支援するUAEにより標的と設定された人物だった」した主旨を語っている。

アラブ首長国連邦(UAE)に雇われた米国の「傭兵」企業がイエメンで政敵排除に直接介入
Photo: BuzzFeed News
左から元SEALのギルモア氏、元ガザ治安当局(PPS: Palestinian Preventive Security)責任者のモハメッド・ダウラン(Mohammed Dahlan)氏、スピアー・オペレーションズ・グループ社の創業者ゴラン氏。

バズフィードの取材に応えた元SEALのアイザック・ギルモア(Isaac Gilmore)氏はゴラン氏と共に、「スピアー社は月150万ドル(=約1.8億円)の報酬と、ターゲットの "排除" でボーナスが支払われる」とする条件を手に、米国でリクルート活動をおこない、グリーンベレー、SEAL、CIAの経験者らに声を掛けたていた」と語っている。なお両氏は、米国人戦闘員に対して「月給25,000ドル(=約300万円)、日給換算では830ドル(=約10万円)に加えてボーナスを提示した」とし、「(傭兵)マーケットの中でも破格の給与だった」と証言している。
加えてスピア社は、今回の作戦に参加した米国の傭兵に対して「法的保護」を提供するため、軍における階級を提供するようUAEに働きかけをおこなっていたことが分かっている。

米国では、「他国で誰かを誘拐し虐待、殺害を共謀する」ということは法的に認められていない。加えて、他国への軍事サービスを提供する企業は、国務省によって規制を受けており、バズフィードの取材に対して国務省は、「傭兵を他国へ供給するような権限を企業に与えたことはない」と語っている。こうしたことからも国内メディアでは、「今回のスクープが法的、外交的にどのような影響を及ぼすかは不透明だ」とする論調で報じているものが多いようだ。

Source: A Middle East Monarchy Hired American Ex-Soldiers To Kill Its Political Enemies. This Could Be The Future Of War.

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