「MARSOCは解散すべき」大手政策シンクタンクの論文が波紋
アメリカ海兵隊特殊部隊、MARSOCは4軍の中でも最も若い特殊部隊である。ゼロ年代における「テロとの戦い」でにわかに増大した特殊作戦能力の不足を埋めるべく活躍しているが、ここに来て解散論を唱えるレポートが発表され、波紋を呼んでいる。
Photo by Senior Airman Joseph Pick
「アメリカ軍の再建:合衆国海兵隊」と題された問題の論文は、ワシントンD.C.に拠点を置き、政府に強い影響力を持つ保守系のシンクタンク、ヘリテージ財団所属のアナリストで、元MARSOCのストラテジストであるダコタ・ウッドが執筆したもの。
Photo by Kyle McNally
以下はサマリーの翻訳である:
海兵隊はインド洋・西太平洋地域沿岸部の制海権をコントロールすべく、第二次世界大戦以来の水陸両用戦能力を高め、他軍では不可能な作戦領域に注力すべきである。
そのためには、有限のリソースが当該海域の制海権の取得・戦闘力の強化につながるか自らに問わなければならない。「イエス」であればより積極的な動きが求められる。「ノー」であるなら、分配を再考しなければならない。
MARSOCに限らず、アメリカ軍の各特殊部隊の出動頻度は本来の想定を超えて増大しており、予算の減少と相まって運営能力を圧迫しつつある。インド洋・西太平洋地域における中国のプレゼンスの強化に対応すべく、海兵隊は特殊作戦能力を解散し、本来の上陸作戦能力にリソースを振り分けなおすべき、というのが要旨である。
MARSOCは2006年、当時のSOCOMの人員不足を解消すべくドナルド・ラムズフェルド長官(当時)が強力にプッシュすることで誕生した。現在は陸軍特殊部隊と重なる領域で活動しており、2020年の予算案では現在よりも2700人増強する計画となっている。
Photo by Kyle McNally
当然のことながら海兵隊とその周辺はこのレポートに対して批判的である。報道官のニコラス・マンワイラー少佐は「レポートが指摘しているのは安全保障問題における海兵隊、その他の軍との統合作戦におけるより広い問題における1面ではある。MARSOCはこれまでと同様、海兵隊の諸兵科、その他特殊作戦部隊との連携を深めていく」と述べた。他にも現役・退役を問わず、反論が相次いでいる。
近代の戦争において、不正規戦能力をもった特殊部隊は欠かすことができない要素であり、これを無くすことが上陸作戦能力の向上につながるとは考えにくい。また、特殊部隊は新兵器・新技術の導入テストを行う部隊という側面もあり、海兵隊全体が新しい戦争に追従できなくなる可能性もある。
また、MARSOCは海兵隊の伝統的な部隊である「レイダース」の名を冠しており、これも「炎上」の一因となっている。ウッドはmilitary.comの取材に対し「MARSOCを批判しているのではなく、海兵隊本来の任務に立ち返るべきではないかと考えている」とコメントしている。
Photo from U.S. Marine Corps Forces Special Operations Command (MARSOC)
Source: Marine Raiders Fire Back After Call to Disband MARSOC | Military.com, Rebuilding America’s Military: The United States Marine Corps | The Heritage Foundation
Text: Chaka (@dna_chaka) - FM201904
Chaka (@dna_chaka)
世界の様々な出来事を追いかけるニュースサイト「Daily News Agency」の編集長。
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