【特集】世界最長狙撃を可能にしたスナイパーライフル「マクミランTAC-50」
2017年6月、カナダ軍の特殊部隊JTF2に所属するスナイパーが3450メートル、着弾まで約10秒という想像を絶する狙撃を成功させ、世界記録を更新した。
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⇒カナダ軍特殊部隊JTF-2スナイパーが、3,450メートルの狙撃を成功。世界最長距離の公認狙撃記録を大幅更新

マクミラン社(McMillan Firearms Manufacturing, LLC)はアメリカ海兵隊の狙撃銃、M40シリーズのシンセティックストックを生産していることで有名だ。1973年、ストックをハンドメイドしていたゲール・マクミランがマクミラン・ファイバーグラス・ストック社を起業、ベンチレストライフルの世界記録を持つ兄弟のミラード・マクミランとともに仕事を開始した。
その後、ストックだけでなく火器そのものの開発・生産も始める(2013年にマクミラン・ファイアアームズとして外部に買収される)。軍、特にアメリカ海軍特殊部隊とのつながりが深く、彼らの求めに応じて様々な銃器を制作していたがそれらが結実したのがマクミラン・TAC-50である。
個人火器としての.50口径ライフルは「持ち運べる大砲」という側面が強かった。第二次世界大戦では軽車両や敵施設などの目標を、遠距離から破壊する「対戦車ライフル」として、こうした大口径のライフルが多く用いられた。
朝鮮戦争のころには.50口径の弾丸での長距離精密射撃が行われるようになった。スコープを搭載したM2重機関銃は、その重量によって反動を相殺し、安定した弾道を得ることができる。ベトナム戦争では海兵隊のカルロス・ハスコックが超長距離狙撃を成功させているし、フォークランド紛争でもアルゼンチン軍がこれを用いてイギリス軍を遠距離から苦しめた。
M2重機関銃を対戦車ライフル化したプロトタイプ。
そして近年、いわゆる「テロとの戦い」やイラク・アフガンといった見通しのいい戦場での戦いによって、.50口径の精密射撃が再び注目されている。敵をアウトレンジできるのはもちろん、ハイジャック犯排除の際にコックピットの分厚いアクリルガラスを撃ち抜けるパワーがあり、武装勢力が用いる軽車両を破壊でき、遠距離から安全にIED(即席爆発物)を処理でき、かつギリギリ持ち運びが可能な大型狙撃銃は、まさにテロとの戦いに即した火器である。
こうした要望に対してマクミラン社はいくつかのモデルで答えてきた。
M87
これはバレット社のM82A1と米軍のトライアルで競うこととなったが、速射能力でセミオートのM82A1に劣り、不採用となった。写真は改良型のM87R。
M88
アメリカ海軍特殊部隊が89年のパナマ侵攻や湾岸戦争に使用していた。船舶臨検の際に遠距離から臨検チームを援護するのに用いられた。
M93
折り畳み式ストックなどTAC-50に連なる機能がある。当時の火器部門であったG.マクミラン&Co.からスピンアウトしたハリス・ガンワークスから今も購入することができる。
これらが結実したのがTAC-50である。96年に設計開始、2000年にリリースされたこのライフルはシンプルかつ強靭なアクションとプローンからの射撃に特化したデザインのストック、放熱と軽量化を兼ねたフルート入り29インチ銃身をもち、その重量と巨大なマズルブレーキによって.50口径弾をコントロールできる。
2001年にカナダ軍と契約を締結、「C15 LRSW(Long Range Sniper Weapon)」の制式名が与えられ2002年に配備開始され、その年2回、世界最長狙撃記録を更新した。こちらは同年6月、ロブ・ファーロング伍長が世界記録を更新した時に使用した銃である。
カナダ陸軍の演習。フィンランドのBR Tuote社のT8Mサプレッサーを装着している。
アメリカ海軍もMk.15 Mod.0としてTAC-50を採用した。
2011にリリースされたシグ社の大口径ライフル「SIG50」はTAC-50の設計を、シグ社のデイヴィッド・グリムショーが小変更したものだ。オリジナルの設計からレシーバーを切削して軽量化を図り、SIG P250と同形状のピストルグリップを用いてエルゴノミクスを向上させている。
2012年、モデルチェンジされたTAC-50A1とA1R2がマクミランから発売された。A1はフォアエンドが5インチ長くなり、そしてグリップが小さく握りやすくなった。またバイポッドも軽量なものになって取り回しがよくなった。
さらにA1R2は油圧ピストンによる反動抑制システムがストックパイプに装着された。リコイルのピークを90%減少させるという。
分割部分に装着された反動抑制システム
実射動画。ダンパーの効果がよく分かる。
TAC-50は軍に採用されたライフルだが、販売に大きな制限はないため大口径ライフル愛好家にも人気があるようだ。セットの価格が9000~1万ドルという非常に高価なライフルだが、TAC-50のアクションを利用して作られたカスタムモデルが存在する。
昨今、.338ラプアマグナムや6.5mm口径など狙撃銃・アサルトライフルの大口径化が検討されている。ある程度の火力があり、対戦車ミサイルよりもコンパクトで、小銃をアウトレンジできる.50口径の対物・対人ライフルは今後も需要が衰えることはないだろう。
Text: Chaka (@dna_chaka)
その後、ストックだけでなく火器そのものの開発・生産も始める(2013年にマクミラン・ファイアアームズとして外部に買収される)。軍、特にアメリカ海軍特殊部隊とのつながりが深く、彼らの求めに応じて様々な銃器を制作していたがそれらが結実したのがマクミラン・TAC-50である。
個人火器としての.50口径ライフルは「持ち運べる大砲」という側面が強かった。第二次世界大戦では軽車両や敵施設などの目標を、遠距離から破壊する「対戦車ライフル」として、こうした大口径のライフルが多く用いられた。
朝鮮戦争のころには.50口径の弾丸での長距離精密射撃が行われるようになった。スコープを搭載したM2重機関銃は、その重量によって反動を相殺し、安定した弾道を得ることができる。ベトナム戦争では海兵隊のカルロス・ハスコックが超長距離狙撃を成功させているし、フォークランド紛争でもアルゼンチン軍がこれを用いてイギリス軍を遠距離から苦しめた。
M2重機関銃を対戦車ライフル化したプロトタイプ。
そして近年、いわゆる「テロとの戦い」やイラク・アフガンといった見通しのいい戦場での戦いによって、.50口径の精密射撃が再び注目されている。敵をアウトレンジできるのはもちろん、ハイジャック犯排除の際にコックピットの分厚いアクリルガラスを撃ち抜けるパワーがあり、武装勢力が用いる軽車両を破壊でき、遠距離から安全にIED(即席爆発物)を処理でき、かつギリギリ持ち運びが可能な大型狙撃銃は、まさにテロとの戦いに即した火器である。
こうした要望に対してマクミラン社はいくつかのモデルで答えてきた。
M87
これはバレット社のM82A1と米軍のトライアルで競うこととなったが、速射能力でセミオートのM82A1に劣り、不採用となった。写真は改良型のM87R。
M88
アメリカ海軍特殊部隊が89年のパナマ侵攻や湾岸戦争に使用していた。船舶臨検の際に遠距離から臨検チームを援護するのに用いられた。
M93
折り畳み式ストックなどTAC-50に連なる機能がある。当時の火器部門であったG.マクミラン&Co.からスピンアウトしたハリス・ガンワークスから今も購入することができる。
これらが結実したのがTAC-50である。96年に設計開始、2000年にリリースされたこのライフルはシンプルかつ強靭なアクションとプローンからの射撃に特化したデザインのストック、放熱と軽量化を兼ねたフルート入り29インチ銃身をもち、その重量と巨大なマズルブレーキによって.50口径弾をコントロールできる。
The McMillan TAC50 - YouTube
2001年にカナダ軍と契約を締結、「C15 LRSW(Long Range Sniper Weapon)」の制式名が与えられ2002年に配備開始され、その年2回、世界最長狙撃記録を更新した。こちらは同年6月、ロブ・ファーロング伍長が世界記録を更新した時に使用した銃である。
カナダ陸軍の演習。フィンランドのBR Tuote社のT8Mサプレッサーを装着している。
アメリカ海軍もMk.15 Mod.0としてTAC-50を採用した。
2011にリリースされたシグ社の大口径ライフル「SIG50」はTAC-50の設計を、シグ社のデイヴィッド・グリムショーが小変更したものだ。オリジナルの設計からレシーバーを切削して軽量化を図り、SIG P250と同形状のピストルグリップを用いてエルゴノミクスを向上させている。
SIG SAUER Gun Guy Dave Grimshaw Shows off the SIG 50 Rifle - YouTube
2012年、モデルチェンジされたTAC-50A1とA1R2がマクミランから発売された。A1はフォアエンドが5インチ長くなり、そしてグリップが小さく握りやすくなった。またバイポッドも軽量なものになって取り回しがよくなった。
さらにA1R2は油圧ピストンによる反動抑制システムがストックパイプに装着された。リコイルのピークを90%減少させるという。
分割部分に装着された反動抑制システム
実射動画。ダンパーの効果がよく分かる。
TAC 50 A1 R2 Video - YouTube
TAC-50は軍に採用されたライフルだが、販売に大きな制限はないため大口径ライフル愛好家にも人気があるようだ。セットの価格が9000~1万ドルという非常に高価なライフルだが、TAC-50のアクションを利用して作られたカスタムモデルが存在する。
STALKER McMillan MK15 - Drake Associates Inc.
昨今、.338ラプアマグナムや6.5mm口径など狙撃銃・アサルトライフルの大口径化が検討されている。ある程度の火力があり、対戦車ミサイルよりもコンパクトで、小銃をアウトレンジできる.50口径の対物・対人ライフルは今後も需要が衰えることはないだろう。
Text: Chaka (@dna_chaka)
Chaka (@dna_chaka)
世界の様々な出来事を追いかけるニュースサイト「Daily News Agency」の編集長。
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