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ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争中にシボレー・カマロを駆って支援物資を届け続けた元特殊部隊員がいる

海外軍事 Comments(1)
ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争中にシボレー・カマロを駆って支援物資を届け続けた元特殊部隊員がいる
Photo by Helge Meyer

90年代初頭、ソ連の崩壊にともない衛星国であった東欧諸国では激しい政治的変革がおこった。この政変と民族・宗教的対立が組み合わさったボスニア・ヘルツェゴビナ紛争は多数の市民を巻き込み、戦後ヨーロッパ最悪の紛争と言われる。その真っ只中でチューンアップしたアメ車を駆り、人道支援を行ったとあるデンマーク人がいる。

元デンマーク軍特殊部隊員ヘルガ・メイヤーは、ある日神の声を聞き、ボスニアに向かうことを決意したという。

ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争では多数の難民、避難民が発生していた。彼らに対し国連やその他の団体が支援物資を送ったが、このコンボイが武装勢力に襲われ、物資が強奪されるのが問題となっていた。

ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争中にシボレー・カマロを駆って支援物資を届け続けた元特殊部隊員がいる
Photo from Wikimedia Commons


そこで、メイヤーは現地の米軍指揮官にとんでもないアイディアを提案した……「遅いトラックではなく小さな目立たない高速な車両であれば、包囲を突破し物資を届けることができるのではないか?」……驚くべきことに指揮官はこれを許可し、前代未聞の輸送作戦が決行されることとなったのであった。

ベースカーとなった1979年製シボレー・カマロはまず完全に分解され、底部・側面・背面に防弾装甲が施された。フロントには地雷排除用のプロウラーが備えつけられ、パンクしても走れるランフラットタイヤが装着された。ボディは電波を吸収する特殊な塗料でマットブラックに再ペイントされ、サーマルビジョンやスターライトスコープが搭載され、あらゆる悪路・光量においても走行できるよう改造された。

ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争中にシボレー・カマロを駆って支援物資を届け続けた元特殊部隊員がいる
Photo by Helge Meyer
また5.7リットルのV8エンジンは220HPまでチューンアップされ、ニトロ噴射で一時的に440HPを絞り出すことができたという。これにより、400kgの支援物資を積んだまま、時速125マイル(約200km/h)まで13秒で加速する「戦争用カマロ」が完成したのである。

ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争中にシボレー・カマロを駆って支援物資を届け続けた元特殊部隊員がいる
Photo by Helge Meyer


その後、メイヤーは米軍有志が寄付した1万2千ドル相当にのぼる物資を各地に輸送。カマロもメイヤーも武装せず、周囲の兵士達は、丸腰で戦場を行き来するメイヤーを「神がつかわしたランボー」と呼んだという。時には武装勢力とのチェイスが発生したり、時に銃撃されることもあったが、メイヤーの特殊部隊としての経験とカマロの性能で乗り越えることができたようだ。

ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争中にシボレー・カマロを駆って支援物資を届け続けた元特殊部隊員がいる
Photo by Helge Meyer


当時のビデオ映像を含む動画
How an American muscle car became a wartime hero - YouTube


1979年製の車がここまでチューンアップできるかどうか、できたところでこのような性能が出せるのかどうか疑問を呈する声もある。防弾装備はともかく電波吸収塗料はよくある「戦場伝説」の一つだろうと思われる。しかし飢えと寒さと死の危険が身に迫った人々にとって、V8サウンドを奏でながらやってくる黒いカマロは実に頼もしく見えたのではないだろうか。

現在、メイヤーは故郷に戻って余生を過ごしている。カマロは日頃の買い物にも使えるようオレンジに塗り替えられ、今も走っているそうだ。

Source: Gottes Rambo - Unterwegs im War Camaro - Vorwort

Text: Chaka (@dna_chaka)
Chaka (@dna_chaka)
世界の様々な出来事を追いかけるニュースサイト「Daily News Agency」の編集長。


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この記事へのコメント
カマロは改造されたままってことか?
Posted by な | at 2020年03月20日 17:07
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