英タブロイド紙、特殊部隊 SAS が対テロリスト用に「マン・ストッパー」特殊弾利用を検討と報道
イギリスのタブロイド日刊新聞:デイリースター(Daily Star)が 11 月 29 日付の記事で、対テロリスト用の特殊弾『マン・ストッパー(Man-Stopper)』を 陸軍特殊部隊SAS (Special Air Service, 特殊空挺部隊)が使用する前提で、米軍特殊部隊によって現在フィールドテスト中であると報じている。今後数週間以内に SAS の対ISISチーム“クラックフォース(the crack force)”に支給される見通しのようだ。
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デイリースターが『マン・ストッパー』と仮称する特殊弾は、これまでに作られたソフトノーズ弾(soft nose bullet)の中で最も致命傷を与えるもので、スイスアームズ(SWISS ARMS)社で製造されているとのこと。イギリスが特殊弾採用に向けて動き出した背景には、2015年11月13日に起きたパリ同時多発テロで「テロリストの一部が撃たれながらも応戦してきた」という現場エピソードがあるようだ。イギリスの対テロ機関の関係者は「マンストッピングパワーに優れたソフトノーズ弾であれば即時無力化が可能であった」と述べている。
ソフトノーズ弾とは、弾頭部が潰れ易い構造・素材を用いた拳銃もしくは小銃用の弾丸のことを指し、ソフトポイント弾(Soft Point bullet)やホローポイント弾(Hollow Point bullet)がその代表といえる。
●ソフトポイント弾(Soft Point bullet)は、被甲された弾頭の先端部分だけ鉛が露出しており、侵入力が高いうえに潰れ易い構造のためマンストッピングパワーに優れている。更に飛翔速度・飛距離・命中精度に優れたポインテッドソフトポイント弾(Pointed Soft Point bullet)も存在する。
●ホローポイント弾(Hollow Point bullet)は、弾頭の先端部分が凹状になっており、着弾時にキノコ状へと変形する。マンストッピングパワーに優れているが、貫通力と飛翔速度がやや低いとされる。先端部以外を被甲し貫通力をやや増したジャケッテッドホローポイント弾(Jacketed Hollow Point bullet)や、法執行機関向けに開発されたウィンチェスター社のシルバーチップ弾(Silver Chip bullet)は、効果が異なる弾頭タイプが用意されている。
尚、ダムダム弾は、嘗てイギリスが使用していた弾丸のことを指し、その着弾効果が類似するため今ではソフトノーズ弾の俗称となっている。人体へのダメージが大きいため人道的配慮から、1899年と1907年に開かれたハーグ国際平和会議の“ダムダム弾禁止宣言(ダムダム弾の禁止に関するハーグ宣言)”により軍事用としての使用が禁止された。着弾効果が類似するため、ソフトノーズ弾は禁止の対象と解釈されているようだ。(注:アメリカは“ダムダム弾禁止宣言”に批准していないが、イギリスは批准している)
これらのソフトノーズ弾は、その着弾効果から狩猟用とされているが、マンストッピングパワーは法執行機関の任務に有効(貫通による二次被害の軽減など)であるため、着弾効果が異なる弾頭が数多く開発され、使用目的に適した弾丸を選ぶかたちで法執行機関で使用されている。
軍隊に関しては、先に触れた“ダムダム弾禁止宣言”に加えて、同会議の“ハーグ陸戦条約”第23条5項《不必要な苦痛を与える兵器、投射物、その他の物質を使用すること》に抵触する恐れがあるとし、条約に批准したほぼ全ての国が使用禁止としている。
デイリースターの記事によると、ある情報筋は「弾頭が着弾時にバラバラになるように設計されており、他の弾丸と比べて罪のない一般市民のリスクを軽減する効果がある」と話しているようだ。また、イギリス国防省高官は「自爆ベストを着たテロリストは1発で倒さなければならない。接近戦では特にソフトノーズ弾が必要である。通常の弾丸と異なり、内部で飛散する構造となっている」とのこと。
この話が事実であれば『マン・ストッパー』は、アメリカの G2 Research 社の R.I.P.弾(Radically Invasive Projectile)に類似する弾丸と思われる。R.I.P.弾 の弾頭は着弾時に花びらのように広がり、ターゲット内で直進する部分と八方へ飛散する部分に分かれる構造となっている。“Radically Invasive Projectile : 徹底的に侵害する弾”という名に違わぬ強力な着弾効果が話題となり、賛否を巻き起こした。
Daily Star 2015/11/29
Text: 弓削島一樹 - FM201512
これらのソフトノーズ弾は、その着弾効果から狩猟用とされているが、マンストッピングパワーは法執行機関の任務に有効(貫通による二次被害の軽減など)であるため、着弾効果が異なる弾頭が数多く開発され、使用目的に適した弾丸を選ぶかたちで法執行機関で使用されている。
軍隊に関しては、先に触れた“ダムダム弾禁止宣言”に加えて、同会議の“ハーグ陸戦条約”第23条5項《不必要な苦痛を与える兵器、投射物、その他の物質を使用すること》に抵触する恐れがあるとし、条約に批准したほぼ全ての国が使用禁止としている。
デイリースターの記事によると、ある情報筋は「弾頭が着弾時にバラバラになるように設計されており、他の弾丸と比べて罪のない一般市民のリスクを軽減する効果がある」と話しているようだ。また、イギリス国防省高官は「自爆ベストを着たテロリストは1発で倒さなければならない。接近戦では特にソフトノーズ弾が必要である。通常の弾丸と異なり、内部で飛散する構造となっている」とのこと。
この話が事実であれば『マン・ストッパー』は、アメリカの G2 Research 社の R.I.P.弾(Radically Invasive Projectile)に類似する弾丸と思われる。R.I.P.弾 の弾頭は着弾時に花びらのように広がり、ターゲット内で直進する部分と八方へ飛散する部分に分かれる構造となっている。“Radically Invasive Projectile : 徹底的に侵害する弾”という名に違わぬ強力な着弾効果が話題となり、賛否を巻き起こした。
参考動画:G2R RIP 2014『マン・ストッパー』の全容が気になるところであるが、SAS がこの様な特殊弾を用いることになれば“ダムダム弾禁止宣言”や“ハーグ陸戦条約”の扱いを巡って話題となるのは間違いないだろう。
Daily Star 2015/11/29
Text: 弓削島一樹 - FM201512
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