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起死回生、財務状況に苦しむドイツH&K社が英軍『SA80A3』×4.4万挺の改修作業を大量受注。総額110億円規模

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起死回生、財務状況に苦しむドイツH&K社が英軍『SA80A3』×4.4万挺の改修作業を大量受注。総額110億円規模
Photo from UK Armed Forces
ドイツ銃器メーカー「ヘッケラーアンドコッホ(H&K: Heckler and Koch)」社が、英国制式小銃の改修作業を大量受注したことが分かった。

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「欧州連合の入札電子日報(TED: Tenders Electronic Daily)」は、「SA80A3アップデート計画(SA80 A3 Equipped to Fight Programme)」の下、H&K社が陳腐化した英軍制式小銃「SA80A2」×44,000挺を近代化アップデートし、最新仕様の『SA80A3』にする作業として約7,500万ポンド(=約110億円)を受注したことを公示した。1挺当たり約1,800ポンド(=約26万円)の計算となり、作業自体は英国内にあるH&K社の子会社でおこなわれる予定となっている。
SA80は1980年代に開発されたブルパップ式小銃。グリップとトリガーより後方に弾倉や機関部が位置することで、銃身長を保ちつつも銃全体を短縮化している。
一方、「軍制式小銃」として位置付けられるも、当初よりSA80は、様々な動作不良・欠陥に悩まされ、兵士の間では『使えない「公僕(civil servant)」』と嘲笑の対象となり、不評を買っていた。

今回の一報を掲載したドイツ主要紙の「ヴェルト」は、「SA80の近代化改修においては、英国とH&K社の関係、そして既に改修実績を持っていることなどから、選択の余地が無かった」と記している。

H&Kの社史を振り返ると、1949年、エドモンド・ヘッケラー(Edmund Heckler)とテオドー・コッホ(Theodor Koch)、アレックス・ザイデル(Alex Seidel)によって産声を上げ、当初「家電製品」や「自転車用の交換部品」の製造を手掛けていた。
当時「武器製造が禁止」されていた敗戦国ドイツだったが、H&K社はその中でも数少ない許可企業として活動。その後、武器製造禁止が解かれ、再軍備が認められて以降、1955年の連邦軍(Bundeswehr)創設時には、晴れて純然たる武器製造事業者へと転換している。
その後1959年から60年代に掛けて、G3、MP5、HK33といったベストセラーを世に送り込み、70年代には「ハンティング・スポーツ部門」「警察・防衛部門」の2事業部門に枝分かれし、続く80年代にビジネスは更なる多様化を歩んでいる。

そして1991年には『ブリティッシュ・エアロスペース(British Aerospace)』傘下の『ロイヤル・オードナンス(Royal Ordnance)』に買収され、その際の組織再編の取り組みが、H&K社の中核事業の復帰を導いたという。
その後2002年になって、アンドレアス・ヘーシェン(Andreas Heeschen)氏とキース・ハルシー(Keith Halsey)氏がブリティッシュ・エアロスペースからH&K社を買い戻している。

直近では、お膝元であるドイツ連邦軍(Bundeswehr)での「G36」リプレイスに伴う次期小銃選定において、H&K社が「最有力候補」とみられるも、先月「装備情報技術運用庁(BAAINBw)」が『全ての候補落選を決定』と公表するに至っている。

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HK416が快進撃する一方で、多方面でトラブルを抱えている同社については、財務状況の逼迫が伝えられており、収益性の良いビジネスを展開することが喫緊の課題となっていた。それだけに、今回の受注獲得は、同社にとって極めて重要な収益源になるとみられている。

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SA80A3は、少なくとも2025年まで制式ライフルとしての運用が続き、SA80A2は段階的に廃止となる。

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