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カナダ軍が国産迷彩『CADPAT』から米国『MultiCam』への切り替えを検討。識者は血税の無駄遣いと反論

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カナダ軍が国産迷彩『CADPAT』から米国『MultiCam』への切り替えを検討。識者は血税の無駄遣いと反論
Photo : Caporal Natasha Tersigni, Affaires publiques du 38e Groupe-Brigade du Canada.
©2017 DND/MDN Canada.
This photo is for illustrative purposes only.
カナダ軍が5億カナダドル(=約430億円)もの巨費を投じて、95,000名の常時・予備役兵士のため、新しい迷彩戦闘服への切り替えを検討している。
カナダ軍が国産迷彩『CADPAT』から米国『MultiCam』への切り替えを検討。識者は血税の無駄遣いと反論
Photo: Original Multicam
今年8月に投稿されたこの一報は、ノバスコシア州ハリファックスを訪れたジョナサン・バンス(Jonathan Vance)軍参謀総長(CDS: Chief of Defence Staff)が、7ページに渡る概況書類の中で、「現行の『CADPAT(Canadian Disruptive Pattern)』を使った迷彩戦闘服から、特殊部隊員が新たに使用を始めた米国製『マルチカム(MultiCam)』パターンの戦闘服へリプレイスをしたい」と語っていたことから明らかとなっている。

国防省の調達責任者は、「軍がどのように戦闘服の問題を進めるかを決めるのは時期尚早だ」「様々なオプションが検討されている」と語る一方、「新たな戦闘服を少量購入し、今秋にも試験に供する可能性がある」ことにも言及していた。

カナダ軍が国産迷彩『CADPAT』から米国『MultiCam』への切り替えを検討。識者は血税の無駄遣いと反論
Screenshot from CANSOFCOM official trailer
カナダ軍におけるマルチカム迷彩の採用については、昨秋にポストメディア社が「政府は産業界に対して、今後5年以上を掛けて特殊部隊で使用する18,000着のマルチカム戦闘服の購入をおこなう見込みであることを公示した」と報じている。

通常、特殊部隊の多くは一般部隊と異なる規則の下で運用され、先行して新たな技術や製品を採り入れ、その使用感をフィードバックさせながら熟成を重ね、後に一般部隊にも普及させるといった流れを採る。こうした「トリクルダウン(均霑…きんてん)理論」に基づく装備品の調達ルーチンは、カナダ軍におけるマルチカムへのリプレイスにも当てはめられる。国内報道では、CADPATの内の「2パターン」がマルチカムへ統合されると指摘している。

特殊部隊員を除く大多数の兵士は国産CADPATを使用した戦闘服を着用している。CADPATには、砂漠や森林地、寒冷地、市街地と環境に合わせて4種類のバリエーション展開が図られており、いずれも政府がその著作権と商標権を保有している。

一方のマルチカムは、米国ニューヨークに本社を置く『クライ・プレシジョン(Crye Precision)』社が特許取得をしたブランドで、最近では大部分の米軍部隊が採用するなど、主力迷彩として確固たる地位を築いている。加えて同盟国軍を中心に、多くの部隊でも採用が進んでいる。

カナダ軍が国産迷彩『CADPAT』から米国『MultiCam』への切り替えを検討。識者は血税の無駄遣いと反論
Photo from Wikimedia Commons.

カナダ軍が国産迷彩『CADPAT』から米国『MultiCam』への切り替えを検討。識者は血税の無駄遣いと反論
Photo from Wikimedia Commons.
今回の一件について、国産迷彩のパイオニアである「ハイパーステルス・バイオテクノロジー社(HyperStealth Biotechnology Corp.)」社の『ガイ・クラマー(Guy Cramer)』社長は、21ページに渡る論文を発表。その中で、カナダ軍の兵士は、1990年代後半に掛けて「オリーブドラブ(OD: Olive Drab)」のファティーグ(戦闘服)を着用していたが、新たに登場したCADPATにより50~300メートルの距離を取った際の検出率は45%以下に低減。またCADPAT着用時には、35%近付かなければ気付かれない迷彩効果があったとしている。また、今回マルチカムへの統合が図られるのは森林用の「Temperate Woodland」と、砂漠地用の「Arid regions」となることを示している。

戦闘服に使用される迷彩パターンについては、その迷彩効果だけでなく、敵味方識別の意味合いもある。この点について、クラマー氏は「マルチカム迷彩は既に20ヶ国以上の軍特殊部隊員が使用している」「中にはシリア紛争において、本来敵対関係にある米露の特殊部隊が似たような迷彩パターンを着用し作戦を展開しているようなケースさえあり、現場としてはかなり識別が難しいのではないか」とする持論を展開。政府が権利を保有していることから新たなロイヤルティーが発生せず、迷彩効果にも特段の問題が報告されておらず、また敵味方識別の意味合いからも現状維持が好ましいとし、マルチカムへの切り替えは「税金の無駄使いに他ならない」と断じている

Source: Christie Blatchford: Defence chief wants to toss Canadian-made uniforms for U.S. version — at a cost of $500M
Plan to outfit Canadian troops with U.S. uniforms a waste of $500M: top camouflage designer
Canadian Forces considering changing regular forces camouflage from CADPAT Temperate Woodland and CADPAT Arid Regions to Multicam

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