NEWS

「グリーンベレー選抜はいまやフリーパスに等しい」内部からの告発文について軍が調査を開始

海外軍事 Comments(0)

U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Joseph Pick
This photo is for illustration purposes only.
「我が連隊は、我々の伝統、能力、そして我々に寄せられる信頼を蝕む癌に侵されている」というショッキングな書き出しで始まる「告発文」が膨大な数の軍関係者や報道メディアに送られ、話題となっている。

スイスの匿名メールサーバーを介して送られた告発文は約6300語という長大なもので、アメリカ陸軍特殊部隊、いわゆる「グリーンベレー」選抜過程の改悪や不正行為を暴露している。その内容の緻密さからおそらくは教官、あるいはそれに近い人物によって書かれたものであると考えられる。

Brig. Gen. Kurt Sonntag, deputy commanding general for U.S. Army Special Operations Command provides the opening remarks for the 2014 North Carolina Field of Honor. (Photo Credit: Chuck Vickers)
This photo is for illustration purposes only.
内容の中心は選抜の易化について。2015年から様々な口実によって基準が引き下げられ、事実上フリーパスになっている、と責任者のソンタグ少将をはじめ幹部・関係者の実名を挙げて指摘している。

Photo by Staff Sgt. Russell Klika
グリーンベレーの選抜過程は大きく2段階に分かれる。前段は「A&S(19日間)」。そして後段の「Qコース(36週間)」である。前者は体力テストが中心、後者は特殊部隊員として専門的な教育を施しつつふるいにかける過程である。詳しくは以前の特集を参照されたい。

関連記事:
特集:米軍特殊部隊 ― アメリカ陸軍特殊部隊 USASOC編

告発文が問題としているのは後段のQコースである。Qコースは5つのフェーズに分かれており、それぞれで基準に達しない者、不品行など適性を欠くと判断された者は、審査委員会にかけられた後、再訓練や失格といった処分を受ける。

2017年7月、体力錬成訓練中に負傷者が続出したことをきっかけに、フェーズ1「SFOC(特殊作戦部隊へのオリエンテーションコース)」訓練の一時中止と訓練内容の再評価が行われた。その結果SFOC中の体力テストは「診断」扱いとなり、体力不足による落第が無くなってしまった。

United States Army soldiers in SFAS class 04-10 participates in log and rifle PT at Camp MacKall on Wednesday, January 13, 2010.
落第者がいなくなることで、落第を前提としていたクラス編成も変化する。160~250人のSFOC参加者に対して、フェーズ2の「SUT(小規模部隊戦術)」の定員は120人しかない。当初はSFOC参加者に対して訓練中にポイントを付与し、高得点の者をSUTに送る方式が検討されていた。しかしソンタグ少将はSUTの定員を倍の240人に拡大する。

その後も体力測定関連の訓練について廃止や基準の引き下げが行われ、最終フェーズである言語訓練(修了に体力テスト合格を必要とする)も省略することとなった。つまり志願者は前段の「A&S」さえ突破してしまえば体力不足を原因として落第することがなくなった。


Photo by Staff Sgt. Russell Klika
体力テストには腕立て伏せや腹筋だけでなく、リュックサックランやランドナビゲーションといった長距離移動訓練が含まれる。こうした歩兵の基本となる訓練に合格せずともQコースを修了できてしまうことになる。今や自分から辞退するか、あるいは負傷でコースを継続できなくなる以外は落第することがなく、辞退を申し出ても強く引き止められ、Qコースを継続するケースがほとんどであるという。

確かに「A&S」は、それそのものが体力・精神力の限界を試される過程である。ディスカバリー・チャンネルのドキュメンタリー「Two Weeks in Hell(訳:地獄での2週間)」でその様子は紹介されているが、これを突破するには尋常ではない体力が必要である。

Two Weeks in Hell Trailer - YouTube
しかしQコースの基準はアメリカ陸軍特殊部隊が経験した実戦から産み出されたものである。これを否定することは彼ら自身の歴史を否定することにほかならない。

またここまで易化しているにも関わらず、告発文では:
・ランドナビゲーションコースにGPS機器を隠しておいてカンニングしようとした志願者
・上層部とのコネを使って審査委員会を突破した志願者
・教官が機密資料を外国人受験者に見せていたというウソで脅迫しようとした志願者
・「訓練が厳しすぎる」とクレームをあげ、教官を罷免させた志願者

が出ており、グリーンベレーにおける文化・規律の緩みがすでに顕になっていることを指摘している。


Photo by Staff Sgt. Russell Klika
なぜ上層部はQコースの合格基準をここまで引き下げてしまったのか。告発文では、特殊部隊員の採用ノルマを達成することで評価されたいという「高官どもの恥ずべきキャリアイズム」を挙げている。さらには「初の女性グリーンベレー」を採用するために基準を下げたのではないかとも推論している。

名前を挙げて批判されたソンタグ少将は「アメリカ陸軍ジョン・F・ケネディ特殊戦センターの皆さん」と題する文書を出し、A&Sで体力に関する選抜は十分であり基準を下げてはいないこと、卒業生の成績は良好であることを強調した。同時に告発文の書き手の捜査も開始したが「告発者の意見にも価値はあり口を塞ぐつもりはない」としている。

Source: APNewsBreak: Army probes criticism of Green Beret training
FREE CONTENT: Careerism, cronyism, and malfeasance in the Special Warfare Center | SOFREP

Text: Chaka (@dna_chaka) - FM201801
Chaka (@dna_chaka)
世界の様々な出来事を追いかけるニュースサイト「Daily News Agency」の編集長。


同じカテゴリー(海外軍事)の記事画像
カナダ軍が国産迷彩『CADPAT』から米国『MultiCam』への切り替えを検討。識者は血税の無駄遣いと反論
ノルウェー警察が一部機関の標準サービスピストルに『SIG P320 X』シリーズを採用
コルトとFNアメリカが「M4」「M4A1」生産のため、米陸軍から現行契約からの変更を受注
米陸軍が旅団戦闘チームに再補給無しで『7日間』戦える体制を企図。3Dプリンタ等の先進技術がカギ
「あらゆるセンサーに検出されない」米陸軍の次世代迷彩システム(ULCANS)にイスラエル発祥の企業が受注獲得
米ADS社 L3社と共同で『PVS-14』暗視装置の延命補修プログラムを提供開始
同じカテゴリー(海外軍事)の記事
 カナダ軍が国産迷彩『CADPAT』から米国『MultiCam』への切り替えを検討。識者は血税の無駄遣いと反論 (2018-11-13 13:50)
 ノルウェー警察が一部機関の標準サービスピストルに『SIG P320 X』シリーズを採用 (2018-11-12 15:42)
 コルトとFNアメリカが「M4」「M4A1」生産のため、米陸軍から現行契約からの変更を受注 (2018-11-12 14:17)
 米陸軍が旅団戦闘チームに再補給無しで『7日間』戦える体制を企図。3Dプリンタ等の先進技術がカギ (2018-11-09 18:47)
 「あらゆるセンサーに検出されない」米陸軍の次世代迷彩システム(ULCANS)にイスラエル発祥の企業が受注獲得 (2018-11-09 13:47)
 米ADS社 L3社と共同で『PVS-14』暗視装置の延命補修プログラムを提供開始 (2018-11-08 19:26)
この記事へのコメント
コメントを投稿する

この記事をブックマーク/共有する

この記事をはてなブックマークに追加

新着情報をメールでチェック!

ミリブロNewsの新着エントリーをメールでお届け!メールアドレスを入力するだけで簡単にご登録を頂けます!

[入力例] example@militaryblog.jp
登録の解除は →こちら

ひとつ前のニュース ひとつ次のニュース

PageTop