アメリカ軍の次世代弾薬「プラスチック薬きょうテレスコープ弾」の現在

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アメリカ軍は第2次世界大戦以降弾薬の軽量化をすすめている。しかし金属薬きょうを用いる現在の方式では、マズルエナジーを減らさずこれ以上の軽量化をすすめるのが難しい。

そこで現在注目されつつあるのが樹脂製の薬きょうである。先日行われた国防産業協会(National Defense Industrial Association:NDIA)の2016 ARMAMENT SYSTEMS FORUMにおいて行われたプレゼンテーションでは、アメリカ軍の次世代弾薬として、樹脂薬きょうを用いたテレスコープ弾が提示されていた。
■50年以上の模索が続く小口径・高速弾頭への道
アメリカ軍アバディーン試験場弾道研究所(BRL)のドナルド・ホールは、1952年の報告書「An Effectiveness Study of the Infantry Rifle(歩兵銃の効果に関する研究)」において、それまで使用されていたM1ガーランドの.30口径弾のようなフルサイズの弾薬と比べ、小口径・高速弾頭は命中率で有利であり、当たった際の殺傷能力にも大きな変化がないと結論づけた。

続くノーマン・ヒッチマンの報告書「ORO-T-160 Operational Requirements for an Infantry Hand Weapon(歩兵用小火器に関する要求仕様)」では、ライフルでの戦果は300ヤード(約270メートル)以内のものが90%以上にのぼり、それ以上での効果は無視できるレベルということが明らかにされた。そのうえで、弾頭の威力が過去100年でほとんど変化していないことから、携行弾数、発射速度と命中率の向上が必要であると論じている。事実、第二次世界大戦のデータでは、死亡・負傷兵1名につき5万発のライフル弾が必要であり、携行弾数の増加はアメリカ軍にとって大きな課題だった。

こうしたデータを元に、アメリカ軍は小口径で高速な弾薬を大量に携行するという方向性を現在に至るも追求している。M16小銃に.223弾が採用されたのも、こうした下地があったからである。

■「樹脂薬きょう」の歴史と現在
大量に弾薬を携行するには、軽量なものでなくてはならない。しかし弾薬の小型化は威力の低下を招き、限界がある。このため、薬きょう自体を軽量化するアイディアは小火器用・搭載火器用を問わずかなり初期から存在していた。

例えば60年代、当時開発中だったF-15戦闘機に搭載予定であったGAU-7/A 25mmガトリング砲は樹脂薬きょうを用いていた。航空機向けに軽量であることはメリットがあり、発射後に燃え尽きる材質であったためジェットエンジンに巻き込まれるリスクも少ないとされていたが、信頼性に難があり採用には至らなかった。

小火器用樹脂薬きょうは、比較的低圧の散弾銃向けとしてはすでにポピュラーなものである。高圧なハンドガンやライフル用としては、80年代にUSAC社の.38スペシャル弾が市場参入の道を探っていたようだ。90年代のアメリカ軍の次世代小銃コンペではステアーACRが樹脂薬きょうを採用している。同じコンペに出品されたH&K社のG11のケースレス弾薬も同じ発想のものといえる。

また2000年代末からいくつかのメーカーが樹脂薬きょうの弾薬を発売している。2006年にはNATEC社のPCA-Spectrum、2011年にはPCP Ammunition社や、スペインExtreme Polymer Research社のPOLYCASEシリーズなどが参入している。

こうした製品は既存のデザインの薬きょうをそのまま樹脂に置き換えているため、手持ちの銃ですぐ使うことができる。しかし樹脂に特化した設計ではないため、構造に無理があるという指摘もある。

PCP Ammunitionの製品はこのように樹脂の頭部と胴部、金属のプライマーホルダーに分割できるが、撃発時にこの接合部分からちぎれて吹き抜けてしまう事故も起こっている。


■アメリカ軍の次世代弾薬「ケースド・テレスコープ弾」
アメリカ軍は2004年からLSAT(Lightweight Small Arms Technologies:軽量小火器技術)計画を進めている。現在の主眼はより軽量かつ強力な弾薬で、まず軽機関銃向けに開発が進められているようだ。

今回紹介されているのはケースド・テレスコープ(CT)弾である。弾頭の後部に火薬室がある従来のデザインと違い発射薬の中に弾頭が埋まっている。こうすることで全長を抑えられるほか、より効率よく圧力を高めることができるため火薬量を少なくし体積を減らすことができる。7.62mmの通常弾とCT弾を比較した場合、重量で34%、体積で18%の削減が可能である。また、樹脂で製造するにあたって強度的にも有利な形状である。


CT弾薬を使用する軽機関銃。5.56mmNATO弾を使用したシステムと同重量で、7.62mmCT弾を運用できるとしている。200発ベルトでフィードでき、20連射のテストにも成功している。2017年までにメカニズムの完成と、カートリッジの完成を目指すようだ。


開発を委託されているTextron社によるプロモーション動画。

開発中のCTカービンの予想図。排莢口は見えないが下向きになるようだ。幅広な印象のあるCT弾であるが太くなる印象は少ない。


CTカービンのメカ部分。装填・排莢メカニズムが従来のものと比べて大型である。軽機関銃と同様に、発射後、次弾が空薬きょうを押し出すシステムと思われる。


現在テストが進む弾頭の比較。具体的な射程距離・マズルエナジーの記述はないが「R1」(中距離)では弾速が重視され「R2」(遠距離)では運動エネルギーが重視される。5.56mmM249、7.62mmM240Lがそれぞれ通常弾。全備重量(左上グラフ)有効射程(左下)1200mでの運動エネルギー(右下)ともCT弾薬が有利である。実験では従来型弾薬と比べ3割以上軽量になりつつ、殺傷能力・有効射程とも向上、低反動化し命中精度も向上したという。特に6.5mmの低空気抵抗弾頭は優秀である。カービンにも採用予定であるが、サイズ・反動が大きすぎるため見直しが行われている。

小口径・高速弾頭の開発、発射弾数の増加はアメリカ軍の50年越しの悲願であるが、妥当性・必要性を再考する余地があるように見える。今回の国防産業会で「光学照準器によるアクティブ補正」がテーマの発表があったり、1200mでの有効性をデータに含めていたりするなど、アウトレンジからを想定している戦場と実際の様子の乖離が大きくなっているようだ。LSATに予算をつけているJSSAP(統合小火器プログラム)は、これまでにもACR計画、SPIW計画など数々の屍を生み出してきているが、今回のCT弾はどのような結末を迎えるのか。計画の目標である2017年に注目したい。

Text: Chaka (@dna_chaka) - FM201607
Chaka (@dna_chaka)
世界の様々な出来事を追いかけるニュースサイト「Daily News Agency」の編集長。


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