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IS 人質救出作戦で米特殊部隊「デルタフォース (Delta Force) 」隊員に犠牲者。作戦時の映像が公開

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IS 人質救出作戦で米特殊部隊「デルタフォース (Delta Force) 」隊員に犠牲者。作戦時の映像が公開
イラク北部のキルクーク県で 10 月 22 日 (木)、「固有 (生来) の決意作戦 (OIR: Operation Inherent Resolve) 」を支援する一環で、米軍とクルド人治安部隊「ペシュメルガ (Peshmerga) 」による IS (Islamic State, ISIS, ISIL, イスラム国) 掃討を狙った特殊作戦がおこなわれた。


クルド人自治区治安委員会 (KRSC: Kurdistan Region Security Council) の発表によると、この特殊作戦によって、69 名の人質が蛮行の直前に救出され、20 名以上の ISIL メンバーが殺害、6 名が捕縛されている。一方、米側では 1 名が負傷、その後に死亡が確認された他、クルド人の対テロ部隊士官 3 名が負傷している。救出された人質に対して最初におこなわれた誰何 (すいか) では、クルド人が含まれていなかったとのこと。

米側の犠牲は、2011 年の米軍のイラク撤退以来、また IS 掃討作戦の戦闘において初。

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犠牲となったのは、1975 年 11 月 22 日生まれのジョシュア・ウィーラー (Joshua L. Wheeler) 曹長 39 歳。
米軍関係筋が ABC News などに語ったところによると、ウィーラー曹長は陸軍の最精鋭対テロ特殊部隊「デルタフォース (Delta Force) 」の隊員。

ウィーラー曹長はオクラホマ州ローランド出身。地元のマルドロウ高校を卒業後、1995 年 5 月に陸軍入隊。(高校時代を知る友人は、「彼は誰とでも親しくなる人物だった」と語っている)

陸軍での最初の配属は、ワシントン フォートルイスの陸軍第 24 歩兵連隊。1997 年 2 月に第 75 レンジャー連隊第 2 大隊 B 中隊に転属。そこで 7 年以上に渡ってライフルチームリーダー、分隊リーダー、対戦車部門リーダーなどを務めている。イラク・アフガンの戦闘作戦の支援では 3 度の派兵を経験している。(報道によっては 5 度の派兵ともされる)
その後、2004 年にノースカロライナ州フォート・ブラッグの陸軍特殊作戦コマンド (ASOC: Army Special Operations Command) 隷下に配属され、最精鋭の対テロ特殊部隊員が集うデルタフォースに参加。イラク・アフガニスタンで 11 度の派兵を経験している。

延べ 14 度の派兵経験の中で、戦闘時の功績を意味する「V デバイス」付き 4 つを含む、11 個の青銅星章 (ブロンズスター メダル) が授与されている。なお今回の戦死で、ウィーラー曹長には名誉戦死傷章 (パープルハート章) が贈られている。

この他、ウィーラー曹長には、下記の各章等が授与されている。

・勲功記章 (Meritorious Service Medal)
・統合任務功績章 (Joint Service Commendation Medal)
・戦闘功労付き統合任務功績章 (Joint Service Commendation Medal with Valor Device)
・航空章 (Air Medal)
・陸軍称揚章 (Army Commendation Medal) × 7
・統合参謀本部勲功章 (Joint Service Achievement Medal)
・陸軍任務完遂勲章 (Army Achievement Medal) × 8
・善行章 (Good Conduct Medal) × 6
・従軍青銅星付き国防従軍記章 (National Defense Service Medal with Bronze Service Star)
・従軍青銅星付きアフガニスタン従軍章略綬 (Afghanistan Campaign Medal with 3 Bronze Service Stars)
・従軍青銅星付きイラク従軍章略綬 (Iraq Campaign Medal with 6 Bronze Service Stars)
・対テロ戦争従軍記章 (Global War on Terrorism Expeditionary Medal)
・対テロ戦争派遣章 (Global War on Terrorism Service Medal)
・下士官専門能力開発リボン (Noncommissioned Officer Professional Development Ribbon) × 3
・陸軍略綬 (Army Service Ribbon)
・ 大統領殊勲部隊章 (Presidential Unit Citation)
・勇猛果敢部隊章 (Valorous Unit Award) × 2
・レンジャータブ (Ranger Tab)
・歩兵戦闘章 (Combat Infantryman Badge)
・歩兵特級射手記章 (Expert Infantryman Badge)
・落下傘記章 (Master Parachutist Badge)

今回の作戦は「人質が大量処刑に直面している」「IS の手により 20 名のクルド人が人質になっている」との情報を受け、ハウィジャ (Hawija) の施設を襲撃する作戦が慎重に立案され実行された。

米側特殊部隊はウィーラー曹長を含めて 30 名で構成。一方のペシュメルガ部隊もほぼ同人数が参加している。(デルタフォースの人数は 10 ~ 20 名だったとする報道もある)
作戦では、人質を監禁した施設に、ペシュメルガと米軍特殊部隊を乗せたブラックホークとチヌークヘリコプター、計 5 機が上空から近付いたとのこと。22 日 (木) 未明に始まった掃討作戦では午前 4 時に終了したことが伝えられている。

Defense Secretary Ash Carter and Army Chief of Staff Gen. Mark A. Milley render honors as an Army carry team moves the transfer case of U.S. Army Master Sgt. Joshua L. Wheeler during a Dignified Transfer at Dover Air Force Base, Del., Oct. 24, 2015. Secretary Carter attended the ceremony to pay his respects to the fallen soldier.
なお、カーター米国防長官は、翌 23 日 (金) に開かれた記者会見の席で、米側は「【戦闘任務では無く】、【助言】と【支援】での参加であった」と説明している。また、併せて同長官は「これは戦闘であり、物事が複雑に絡んでいる」「ウィーラー曹長が作戦に携わる中で、死亡に至った経緯を詳述することは難しい」とも語っている。

英雄・ウィーラー曹長には、前妻との間に 3 人の息子と、再婚者の間に 1 人、計 4 人の息子がおり、その遺体は悲しみの中で 24 日 (土) に帰国した。

ABC News 2015/10/23
New York Times 2015/10/24
Daily Mail 2015/10/23
Shadow Spear 2015/10/24

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この記事へのコメント
hi
Posted by GlennSmift | at 2021年10月23日 17:06
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