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「G36自動小銃スキャンダル」 ドイツ連邦軍が裁判所に約17万挺の引取・改修を求める申し立てを提起

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ドイツ・H&K社の自動小銃G36が、連射による過熱によって命中精度が著しく低下するという問題について、H&K社・国防総省・軍の3者間で緊張が高まっている。軍・国防総省は2015年4月の再監査において欠陥は自動小銃の設計上の問題であるとし、これにH&K社は強く反論しているが、2015年7月7日、軍の調達本部(Bundeswehr-Beschaffungsamt)は、H&K社に対し納入分全17万丁の引取りないしは改修を命令するよう裁判所に申し立てた。これに対しH&K社は同日、国を相手取り「欠陥は認められない」と反訴した。

G36の「欠陥」についてはドイツ軍のアフガニスタン派遣・駐留のころから噂になっており、2012年頃からドイツのメディアが問題を取り上げはじめていた。報道されたものの中に連邦軍の技術開発機関・WTD91がまとめたレポートなど、軍・国防総省からのリークと思われるものもあった。

H&K社はこれらについて同社の敵対的買収を企てていたグループによるネガティブキャンペーンだとし、2013年ごろから「火消し」を開始している。それと同時に実験内容の資料を公開させようと国防総省にはたらきかけていた。2013年11月28日には、被疑者不詳のまま、国防総省からの機密漏洩を告発。また同じ頃には非公式にMAD(軍防諜機関)と接触、内部調査を依頼し断られていたことも明らかになっている。

参考:
H&K、G36に関するメディア報道に対して公式声明を発表 - ミリブロNews
H&K 社が G36 について否定的に報じるメディアを軍防諜機関を利用して調査か - ミリブロNews

国防総省は当初、G36問題はH&K社ではなく弾薬の製造不良が原因であると発表、こちらも問題の沈静化を図っていた。しかし2015年1月に監査を受け入れた後、2015年4月にこれを撤回、H&K社ははしごを外された形になる。この監査受け入れについても、当初はウルスラ国防相まで報告が上がらず、事務部門レベルでの問題解決を図ったと思われる節がある。

参考:
H&K 社の「G36」自動小銃の命中精度下落問題「弾薬ではなく自動小銃側に問題」と国防総省が結論 - ミリブロNews
この2015年4月の再監査はWTD91と民間の研究所で行われたが、H&K社はこの監査についても不備を指摘している。耐久性能の基準が恣意的に変更されていたことや、G36との比較実験に用いられたHK416Bw.2の銃身は蓄熱・放熱性能が大きく、比較対象として適切ではないと主張、軽機関銃としての運用が想定されているHK416Bw.2と比較するのであれば、試験的に納入されたG36の重銃身型、MG36が適当であるとし暗に「過熱を問題にするのであればMG36を採用するべきであった」と反論している。

もし仮に軍の主張が通れば、H&K社はドイツ連邦軍に納入した17万丁の改修に加え、各国に輸出した分についても同様の措置をとることになるのは予想に難くない。例えばリトアニアは1280万ユーロ(約17億円)分のG36を購入しているが、同国が発注した追加の8千丁の納入はペンディングしたままだ。問題がこれ以上長引けば経営への重大なダメージは避けられない。H&K社は重い決断を迫られている。

Sources:
Koblenz: Streit um G36 - Landgericht erhält Klage - Fernsehen :: SWR Fernsehen :: Nachrichten :: Rheinland-Pfalz :: Koblenz | SWR.de
G36-Affäre: Staatsanwaltschaft sucht nach Informanten - Fernsehen :: SWR Fernsehen :: Nachrichten :: Baden-Württemberg :: Baden-Württemberg | SWR.de
Wende im G36-Skandal: Heckler & Koch schießt zurück | Nachrichten | BR.de
Heckler & Koch Fires Back At G36 Audit Report - The Firearm Blog

Text: Chaka (@dna_chaka) - FM201507
Chaka (@dna_chaka)
世界の様々な出来事を追いかけるニュースサイト「Daily News Agency」の編集長。


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